君と描く物語１２

＃５８０ ページ30

アオイ｢受け取ったものをちゃんと返したいって言うAの丁寧な気持ちも分かる

そういう考えになるのはAの優しさだし、Aらしいとも思うけど
でも、時透くんだけじゃない…Aの周りで、Aの為に動いてる人間 皆 同じ気持ちよ

梅だってカナヲだって私だって…見返りなんて無くたって、Aの為に何かしたいっていつも思ってる

大好きな人が笑顔で居てくれる事程、自分にとって幸せな事って無いものね｣

カナヲ｢だから上手に伝えなくてもいいと思う…

今の素直な気持ちを言葉にするだけで十分だよ｣

A｢素直な気持ち……本当に、大丈夫かな…｣

梅｢この三年間ずーっとAの事追い回してた時透なら、分かってくれるんじゃないの？｣

A｢……｣

確かに無一郎くんには、私の答えは既にバレてるんだと思う…

梅｢今のあんたにとっての課題は明確よ

アオイのさっきの言葉も踏まえて、時透がいつも何の為にAの傍に居たかを考える事と…

どんな言葉で伝えるかって事よりも、Aがどんな想いで伝えるかじゃない？｣

A｢…うんっ｣

皆に言われてやっとわかった…
私が出来る、無一郎くんへの唯一の答え方

難しい事なんて一つもないんだ


無一郎くんが何の為に私の傍に居てくれたのか…
そして、どんな想いで伝えるか



そして迎えた、卒業式当日＿＿

今まで何百回と通い慣れた道を、今日は一人で歩く

満開の桜がトンネルを作る並木道
その隙間からは綺麗な青空が覗いていて、門出にはぴったりの雲一つない空

校門には[キメツ学園卒業式]と書かれた看板が立て掛けられていて
人気のない静まり返った厳かな雰囲気が、今日でこの学び舎を旅立つと言う意識を高めた


そして、朝早く…まだ誰も居ない教室で待っている相手は…


ｶﾞﾗｧ…

無一郎｢先輩｣

A｢無一郎くん！おはよう｣

無一郎｢おはよう。それから、卒業おめでとう

ごめんね、こんな日に朝早くから時間作ってもらっちゃって｣


昨日の夜、皆と出掛けた帰り道の途中で一通のメッセージが届いた…

無一郎明日の朝、式が始まる前に先輩の教室で少し話せないかな?


A｢ううん…メッセージありがとう。私も無一郎くんと、ちゃんと話さなきゃって思ってたから｣

無一郎｢…先輩の話聞いてからじゃ僕の話できなくなっちゃいそうだから、先に言わせてくれる？｣ﾆｺｯ

笑顔…だけど、それは痛い程切ない微笑みで…

A｢…うん…わかった｣

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