君と描く物語１２

＃５５８ ページ8

天元side

母｢……進路についても、譲れない何かがあるのよね…｣

天元｢…！｣

…この人はAの気持ち、気付いているんだ…


はっきりは言わずとも、Aが何かに引っかかって
大きな決断が出来ずに居る事に気付いてる


母｢……宇髄先生｣

天元｢…はい｣

俺の名を呼び、それまでAに向けていた視線を
真っ直ぐ俺に向き直し真剣な表情を見せた

母｢もしこの子が…大きな選択の前で立ち止まってしまう事があれば、その時 一番 背中を押してあげられるのは貴方だけだと思うんです

家族や友人の言葉も、ちゃんと受け止めてくれる子ではあるけれど…きっとそれでも限界はある

でも、今までこの子が貴方と過ごして強くなれた事や変わった想い…

他の誰にも動かせなかったものが動いた事実…

それと同じ様に、この先もきっと宇髄先生にしか成し得ない事があると思うんです

だから……この子が道に迷った時は、この子の事よろしくお願いします｣

天元｢…っ｣


子を愛おしく想う親が、自らに限界があると認める事すら大きな決断だろうに…
それをちゃんと噛み締めた上で、我が子の大切な瞬間を支える役目を 他人である俺に託そうとしてくれてる

それがどれだけ凄い事か…


俺に…そんな大役が務まるのだろうか

今まで漠然と、大人の俺が導いてやらなくちゃ…なんて事を思っていたのが
どれだけ大それた事だったかを思い知らされると同時に


…それでも、信じて託してもらった その想いを…全力を掛けてでも受け取りたいと…


天元｢…っ……はい……俺に出来る事は、何でもします

どんな事があっても、必ず…Aさんを守ります｣

ちゃんと受け取らなくては…
この人達が大切に見守って来た掛け替えの無いその存在を想う気持ちを


母｢ありがとう…この子が選んだ人が、貴方で本当に良かったわ｣



−−−−−−

あの時の心底 ほっとした顔が忘れられなくて…
あの日からずっと、俺にとって守り抜きたい…守り抜くべき約束だった

Aに明るい未来を歩んで行って欲しい
そう強く願うのは俺だけじゃない

母｢でも…あの日の約束のせいで、宇髄先生に大きな重荷を背負わせてしまったのではないかと…

ごめんなさいね…貴方にも辛い想いをさせてしまったでしょう｣

天元｢いえ…彼女が笑顔で居てさえくれれば…｣

人生で一番…愛した人だから……


母｢……宇髄先生、もし可能なら…もう一つだけ……お願いを聞いて下さいますか？｣

天元｢…？｣

＃５５９→←＃５５７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す