君と描く物語１０

＃４６７ ページ17

昼休みが始まり、お弁当に手をつけるより先に済ませたかった用事…それは……



ｶﾞﾗｧ…

A｢失礼します。宇髄先生いらっしゃいますか？｣

昼休み開始すぐの職員室は、まだ先生達も疎らで静かだった

小芭内｢…ん？Aか？｣

A｢小芭内先生｣

入口で宇髄先生の名前を呼んで直後、パーテーションで仕切られていた奥の方から小芭内先生が顔を出した

小芭内｢すまない…宇髄は今、次の授業の準備で席を外していて…

言伝なら預かるが、何か急ぎの用だったか？｣

A｢そう…でしたか…｣

なんて…本当はこの曜日のこの時間、宇髄先生が職員室にいない事は知ってる…だからこの時間に来たんだもん

次は私達の選択教科の時間

宇髄先生は毎回、授業が始まる前の休み時間に教室の準備と備品の確認をしに行く事を把握している


だから先生が準備を終えて戻ってくる前の、この瞬間が狙い目だった


……これを直接 顔みて渡したくなくて…

本当に私って…つくづく卑怯で弱虫だな


でも…そう思ってもやっぱり顔見て渡すには勇気が出なくて……

A｢あの…これ、提出しに来たんです。宇髄先生の机に置いておいて貰う事出来ますか？｣

小芭内｢あぁ…勿論 構わないが……｣ｽｯ

小芭内先生に二つ折りにした用紙を手放そうとした時

ﾊﾟｻｯ

小芭内｢…っと、すまない…！｣

A｢いえ…っ｣

小芭内先生の手に渡ったと思って手を離したら、上手く受け渡しが出来ずに床に用紙が落ちてしまった

その拍子に用紙が開き……

小芭内｢…これ、今日までの提出の………｣

A｢…っ｣

小芭内｢…｣

小芭内先生は用紙を拾いあげると、黙って私の記入した内容に目を通した

小芭内｢…あれからよく……考えて出した答えなんだな？｣

用紙に落としていた視線を私に向けて、小芭内先生はそう私に尋ねた

A｢……はい｣

小芭内｢………わかった。では、責任を持って宇髄のデスクに届けておくよ｣

A｢よろしくお願いします…失礼します｣


ｶﾞﾗｶﾞﾗｧ…ﾋﾟｼｬﾝ…ｯ

職員室を出て、私は足早に教室に戻る



これで良かったんだ…これで……

きっと間違ってない


それはまるで自分に強く言い聞かせる様に、何度も心の中で繰り返し呟いた


でもそう呟く度に、重く…鈍い音を立てながら
ゆっくりと不の扉が開く音が聞こえて来るような気がして……




もう引き返せない場所まで来てしまった事に気付くまで…


後 約二時間半＿＿＿

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