君と描く物語 (ページ7)

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＃７ページ7

＿＿『お前も美術部に入んねえか？』

A｢な…んで…｣

天元｢なんでって…だってお前、物作ったり描いたりするの好きなんだろ？さっきの顔見りゃわかるよ

美術部に入ればここにある物好きな用に使っていいし、それに……｢無理です…！｣

はっとした時にはもう遅くて、先生は驚いた顔で私を見ていた

A｢いきなり大きな声出して…すみません｣

天元｢いや、俺の方こそ…なんか気に触る事言っちまったなら悪かった｣

違う…違うんです、先生は何も悪くない

でも私の耳に走る幻聴が、私の気持ちを掻き乱して
先生の言葉を遮らずには居られなかった…

胸元でぐっと両手を握りしめ、思わず俯く

A｢…ごめんなさい｣

天元｢なんで、そんな苦しそうな声なのか…聞いたら駄目か？｣

A｢…私には描けないんです、お姉ちゃんみたいに｣

中学の時も、同じ様に美術部の顧問から声を掛けられた

"才能ある甘露寺蜜璃の妹"

中学に入った時には美術の先生だけじゃなくて、姉を知る多くの人からそういう目で見られてた

当然、妹もその才能があって…同じ様にその手から数多くの作品を作るのだろうと期待された視線

けど私はその視線に押し潰されそうで毎日苦しかった

幼い頃から姉と楽しんでいた物作りも
いつしか劣等感の塊で手が動かなくなっていた

姉の事が大好きなのに

大好きな分、同じ様に生み出せない自分の手が…思考が…嫌で嫌で仕方なくなっていた

『期待外れだったな』『本当にあの人の妹？』
『姉の方が独創性があって…』

どこからともなく聞こえて来る、私にがっかりした声

結局何も残す事も出来ず、一年も経たない間に退部届けを提出した

今でも、その事を思い出すと息が詰まってしまう

天元｢姉さんみたいに描けなきゃいけないのか？どうして？｣

A｢…え？｣

どうしてって…先生だってそれを期待して…

天元｢俺はお前のさっきの顔見て、こんな楽しそうな顔する奴がどんなものを生み出すのかが見たくなったから誘った…それだけだ

今は誰も、姉さんみたいに描けとか作れとか
そんな事思ってもないし求めてもない

姉は姉、AはAだろ？別に姉さんみたいに描けなきゃ駄目だなんて決まりはない

自分の描きたい物を、自分の理想を描けばいい

…俺は、Aが描く世界を見てみたいんだ｣

A｢私の…描く世界…｣

その言葉を聞いて初めて
私を一番縛っていたのは私自身だったのかもしれないと気付かされた気がした