君と描く物語 (ページ16)

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＃１６ページ16

｢ひと段落ついたか？｣

A｢わ…っ……宇髄先生、いつからそこに…！」

独りだと思っていたら、急にすぐ横から声が聞こえて隣を見ると
同じベンチに腰掛けて背もたれに頬杖をるいてこちらを見る宇髄先生がいた

天元｢三十分くらい前からずっと隣に居たんですけど｣

A｢全然気づかなかったです…｣

天元｢凄ぇ集中力だったもんな｣

A｢声かけてくれればよかったのに。ずっと待っててくれたんですか？｣

天元｢いやー、あんな楽しそうな顔して描いてるAの邪魔なんてできないだろ

俺もそれ見てて楽しかったからいいんだよ｣

そう言って話す宇髄先生は本当に楽しそうで

私、そんな楽しそうな顔して描いてたのかな…
まさかニヤけてたって事？変な顔してなかったかな

天元｢下絵、描けたのか？｣

A｢はい…今日はもうこの辺りにして、また明日この続きを描こうと思います｣

天元｢見てもいいか？｣

A｢…はい｣

画板から紙を外し、それを先生に手渡す

先生は目を細めて微笑みながら、じっくりと私の絵を眺める

天元｢人の描く絵には、その人の性格や人間性が表れるってよく言うけど

Aの描く線は、繊細で優しくて…それでいて暖かいな
Aがそう言う人間だっていうのをしっかり伝えてくれる、いい線だ」

A｢…///｣

変わらず絵に視線を向けたままの先生が放つ言葉は、決して偽りのない本心であると言う事が伝わってきて心臓がぎゅっとなるのを感じた

天元｢この絵が完成するのを楽しみにしてる。明日からも頑張れ｣

A｢はい。ありがとうございます｣

天元｢んじゃ、道具片付けてこい。他の奴らもぼちぼち帰る頃だろうから｣

A｢あ！先生、待って下さい。お姉ちゃんの事…

姉はどうして今日ここに来てたんですか？
私に知られたくないような話があったんでしょうか｣

やっぱりどうしても気になる

何故私に隠れて先生と話しをしに来たのか

天元｢んー…単純に心配だったんじゃないか？

Aの事、よろしくお願いしますって言われたんだよ。心配性だけど、いい姉さんだな｣

…私が美術部に入るって言い出したから…かな……
やっぱり気にしてたんだな

天元｢あんな風に大切に思ってもらえるなんて、羨ましいくらいだ。これからも仲良くやれよ｣

ぽんと私の頭を撫で、先生は気をつけて帰れよと言って校舎の方へ消えて行った