優秀な５年生は少し変わってる【忍たま】

28話【文次郎と伊作の事故現場】林檎飴様リクエスト　third ページ37

立花仙蔵side








『作法委員会委員長立花仙蔵先輩はいらっしゃいますか？』



作法委員会室の襖を思いっきり開け放ったAは、開口一番にそう言った。


仙蔵「どうした？そんなに焦って…」

『聞いて下さい！委員長がっ！先輩が！』


やけに慌てた様子で顔を歪めている。

目元にある文次郎より薄い隈が彼女の疲労を表している。

しかも文次郎と違い、どれだけ寝不足でも今以上の隈は作らない。


というか、上手いこと、化粧しているんだろう。




本当に、会計じゃ勿体ない。









『かくかくしかじかなんです！』

要約すると、体の自由が聞かない文次郎が伊作に襲われていた、と。




仙蔵「なるほど。…喜八郎、委員会は任せたぞ。私はどうしても行かねばならん」


そこで息を軽く吸い込み、思いを叫んだ。



仙蔵「友を救いに！(こんな面白そうな事、放っておけん！)」

『何だろ…。今、猛烈に否定したい立花先輩の心の声が聞こえた気がする…』









部屋の襖代わりの布をめくり、自室に入る。

規則正しい金槌の音が響いており、伊作もましてや文次郎の姿も無かった。

いたのは、留三郎1人だけ。


『食満先輩。…伊作先輩と潮江先輩ってどちらに行かれたんですか？』

留三郎「ん？ああ、文次郎なら、宝禄火矢を口に入れたまま叫んだせいで、呼吸困難になって医務室にいるぞ。伊作は、その付き添い」



チッ。


逃げられたか。

しかし、こんな面白い事を放っておく私ではない。

そしてきっと、Aも。




『食満先輩が来た時、お2人ってどんな感じでしたか？』

留三郎「どんなって、言われてもなぁ。確か、文次郎が死んでて伊作が叫んでた事はよく覚えてるんだが…」

『潮江先輩が死にそうになってる所だけ、やけに鮮明と言うわけですね』

留三郎「ああ！そういう事だ！」



爽やかな笑顔で言い切る留三郎に、若干呆れたような疲れたような視線を送るA。








仙蔵「しょうがない。A！医務室に急ぐぞ。ここにもう、用は無い」

『先輩、うちの委員長達で遊ばないで下さいね。委員会の時に面倒くさいので』

仙蔵「それは、無理な頼みだな」





“この人に頼むんじゃなかった”という、心情が手に取るように分かるが、あえて何も言わない。




長屋を駆けていると忍たま達が何事だと、言わんばかりにこちらを向いている。


そんな事は御構い無しに、医務室の扉を開け放つ。

まるで先ほどのAのように。

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