23話【ボロボロ】 ページ32
三反田数馬side
ボロボロの状態で金楽寺に着くと、焦ったようなA先輩が近寄って来て1人ずつ服をはたいて、頭を撫でてくれた。
左近・乱太郎・伏木蔵と撫でられて行く中で、存在感の薄い僕は忘れられているだろう。
ぼんやりとそんな事を考えながら伊作先輩と潮江先輩の話に耳を傾けた。
『数馬』
数馬「はぁ」
どうやったら、影が濃くなるんだろう。
どうやったら、忘れられなくなるんだろう。
どうやったら…
『数馬！』
数馬「え」
目の前いっぱいに広がる瑠璃色の忍者服。
地味なだけの3年生の萌黄色の服とは違う。
抱きしめられていた。
藤内達、他の3年生にバレたら、羨ましがられるだろうなぁ、と他人事のように考える。
『怪我してるなら、そう言え。私も保健委員だ。手当くらい出来るさ』
そう言い、僕を地べたに座らせるとゆっくり丁寧に慎重に的確に僕の右足を治療する先輩。
足を痛めているそぶりを見せたつもりは無かった。
伊作先輩も気付いていなかったし大丈夫だろう、とタカを括っていた。
『ったく、私が後輩の怪我に気付かないとでも思ったのか？…しかも、3年生であるお前の怪我を』
小平太「お。おお、伊作良い所へ来た。お前も参加しろ！1名様ご案内」
伊作先輩が連れて行かれるのを僕ら保健委員会は、黙って見つめている事しかできなかった。
小平太「兵助も来い！」
そして、久々知先輩も喧騒が聞こえる土埃の中へ突っ込んで行った。
正しくは、引きずられて行った。
『らーいぞ〜。あの、馬鹿達どう止める？』
雷蔵「A。気持ちは分かるけど、一応先輩なんだし…」
『一応、だろ』
“一応”をやけに強調したA先輩は、黒い笑みを携えていた。
体の底まで響くような低く大きい鐘が鳴った。
先輩方は、それを合図に戦いをやめた。
和尚「金楽寺の使用料、塀の修補料、使用時間超過による延滞賃、ここまで暴れるとは聞いていないので迷惑料。これらをまとめて会計委員会に請求する」
『すみません、すみません。本当にすみません』
頭を何度も下げて必死に謝っているA先輩は、困ったような笑みを貼り付けていた。
文次郎「はい。では、予算は全額金楽寺へ」
和尚「うむ」
文次郎「というわけで、全委員会の予算案を却下する。予算会議はこれまで！」
『し・お・え・せ・ん・ぱ・い？？一緒にふざけていたあなたにお話があります』
まるで息子を叱る母親のようだった。
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素于葉 - 林檎飴さん» こちらこそ、有難うございます。個人的に納得いかない部分は多いのですが、喜んで頂けて嬉しいです。 (2019年6月29日 21時) (
レス) id: 31c11bca6e (このIDを非表示/違反報告)
林檎飴 - 素于葉さん» 事故現場偏、物凄く面白かったです。特に文次郎と仙蔵のやり取りが面白過ぎて腹筋崩壊しそうになりました。無理と言うか...変なお題でしたのにこんな素敵なお話にしてくれるなんて...有り難う御座いました！！これからも頑張って下さい！ (2019年6月21日 21時) (レス) id: 2932db30f1 (このIDを非表示/違反報告)
素于葉 - 紫苑さん» いえ、こちらこそ、遅れてしまい申し訳ありません。面白い、と言って頂き大変光栄です！ (2019年5月11日 0時) (レス) id: 31c11bca6e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑 - 返事が遅れて申し訳ないです。先程リクエストの方を拝見致しました。面白かったです。10連休全て仕事だったので癒されました。素敵な話をありがとうございます。それでは失礼いたします。時間あるときにまたリクエストさせてください。 (2019年5月8日 20時) (レス) id: 3646c8eb7e (このIDを非表示/違反報告)
素于葉 - 林檎飴さん» はい！有難うございます！ (2019年5月4日 21時) (レス) id: 31c11bca6e (このIDを非表示/違反報告)
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