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14話【もう一度】 ページ23

霧島Aside









『死ぬかと思った』


バクバクと早鐘のように脈打つ心臓を無理やり宥める。

だが、宥めようとすればするほど、動悸は激しくなっていく。






『八左ヱ門には、感謝しないと』

三四郎も大山兄弟もいなくなった自室でほぅと、溜息をつく。



薄い寝間着を強く握り締め目を瞑る。



少しの間、深呼吸を繰り返すと脈拍は以前通りに戻っていった。








勘右衛門がそこらで捕まえた蟻を私の目の前に持って来たときはやばかった。

本気で死ぬかと思った。

私の人生は短かった、と走馬灯まで見る始末だった。









蟻は非力だ。

だから、集団で行動する。

蟻は目が不自由だ。

だから、嗅覚が特化している。









布団をひき、部屋の中に虫がいない事を再三確認して、ろうそくの火を吹き消した。

布団に潜り込んで目を静かに閉じる。


見えて来るのは、暗い闇ばかり。

どこかで鳴いている狼の声なんかが聞こえなければ、誰もいない何も無い世界に放り込まれてしまったかのように錯覚してしまう。







__________

「Aー!ご飯よ、戻って来なさーい!」



『はーい』


美味しい。

山菜の味噌汁もケエキも美味しい。



『お母さん、ケエキ美味しいね。明日も作ってくれるの?』

「Aが良い子にしていたらね。お父さんと作ってあげるわ」


お母さんは、左手が動かない。

昔色々あったって聞いた事はあるけど、お母さんもお父さんも教えてくれない。







『お父さあん‼お母さあん‼やだよぉおおおぉ』

__________





『っはぁ。はあはあはあ』

額を拭うと、汗が大量に掌に付く。


最初の方は幸せだったのに、最後は苦しかった。









『しょうがない』




『八左ヱ門』

八左ヱ門「A?どうした?こんな時間に。しかも、俺の部屋に」


八左ヱ門は、虫と暮らしている為、好き好んで八左ヱ門の部屋に来ようとした事は無い。


というか、今も来たくなかった。

1人部屋の方が邪魔にならないだろう、と思った結果だった。


『緊急事態なんだ。黙って寝かせろ』


八座衛門「は?おい、どういう事だよ。っておい、A!」

『煩い。近所迷惑』


八左ヱ門が喋ろうとしているのを遮り、布団に横たわる。



先程まで八左ヱ門が寝ていたであろう布団は、とても暖かかった。





呆れたように諦めたように布団に入って来た八左ヱ門に抱き付いて、私はもう一度眠りについた。

15話【そういえば】→←13話【全力で】



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素于葉 - 林檎飴さん» こちらこそ、有難うございます。個人的に納得いかない部分は多いのですが、喜んで頂けて嬉しいです。 (2019年6月29日 21時) (レス) id: 31c11bca6e (このIDを非表示/違反報告)
林檎飴 - 素于葉さん» 事故現場偏、物凄く面白かったです。特に文次郎と仙蔵のやり取りが面白過ぎて腹筋崩壊しそうになりました。無理と言うか...変なお題でしたのにこんな素敵なお話にしてくれるなんて...有り難う御座いました!!これからも頑張って下さい! (2019年6月21日 21時) (レス) id: 2932db30f1 (このIDを非表示/違反報告)
素于葉 - 紫苑さん» いえ、こちらこそ、遅れてしまい申し訳ありません。面白い、と言って頂き大変光栄です! (2019年5月11日 0時) (レス) id: 31c11bca6e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑 - 返事が遅れて申し訳ないです。先程リクエストの方を拝見致しました。面白かったです。10連休全て仕事だったので癒されました。素敵な話をありがとうございます。それでは失礼いたします。時間あるときにまたリクエストさせてください。 (2019年5月8日 20時) (レス) id: 3646c8eb7e (このIDを非表示/違反報告)
素于葉 - 林檎飴さん» はい!有難うございます! (2019年5月4日 21時) (レス) id: 31c11bca6e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:素于葉 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年4月27日 2時

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