7話【癪に触る】 ページ13
霧島Aside
勘右衛門「……でさー」
兵助「…だなぁ」
雷蔵「そういえば…」
八左ヱ門「おほー、それはまた…」
三郎「へぇ。…だな」
『う…』
伊作「うるさいよ、君達」
うるさい、と言おうとすると誰かに遮られた。
目を細めつつ、静かに開ける。
伊作「同輩が怪我したから、起きるまで側にいたい気持ちは尊重したいよ?でもね」
悪寒が走った。
この感覚は数度体験した事がある。
崖に落ちた後、何のためらいもなく川に飛び込んだ時とか。
三郎と喧嘩した時とか。
兵助が狂って勘右衛門に襲いかかっていたのを、止めなかった時とか。
伊作「…でも、医務室は遊び場じゃ無いんだ。うるさくするくらいなら出て行ってもらうよ」
とびっきりの笑顔だ。
怖い、その一言に尽きる。
顔だけ動かして周りを見ると、震えながら数馬に抱き付いている伏木蔵が見える。
ゆっくり体を起こしながら、伊作先輩に頼む。
『あー、伊作先輩。すみません、伏木蔵が怖がってるんで…』
伊作「ああ、ごめんね、伏木蔵。Aは、寝てて。まだ、絶対安静だから」
私の方を向いて矢羽音を飛ばして来る八左ヱ門。
八左ヱ門〈助かった、A〉
なんか、こいつらが助かったのは、癪に触るな。
《助けたつもりはないが》
同じように矢羽音で返す。
八左ヱ門〈またまた、謙遜するなって〉
『ですから、外でやって下さい』
三郎「この野郎ぉぉぉぉ‼」
あ、叫んだ。
伊作「学習しないねぇ」
伏木蔵「A先輩ぃ」
数馬に抱き付いたまま、私の服の裾を握りしめている。
『あー、よしよし』
伊作先輩が5年生を連れて、本当に外へ出て行ったのを確認して、伏木蔵に声をかける。
『伏木蔵。伊作先輩に、私も数馬も怒られた事があるんだ。怖かったなぁ。私なんて、入学式に叱られたんだぞ。これから6年間、こんな事ばかりかと思った』
本当に恐怖でしかなかった。
普通に平穏に暮らしていこうと思っていたのに、無理かもしれないと悟った瞬間だった。
しかもその後、入学式初日で先輩に叱られていた女子の同輩、という奇異の目で見られまくった。
ただでさえ、女子というだけでも珍しかったのに、伊作先輩の所為で更に特典がついた。
伏木蔵「数馬先輩。なんかA先輩が燃えてます」
数馬「ああ〜、時々ある発作みたいな物だから、気にしない方が良いよ」
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素于葉 - 林檎飴さん» こちらこそ、有難うございます。個人的に納得いかない部分は多いのですが、喜んで頂けて嬉しいです。 (2019年6月29日 21時) (レス) id: 31c11bca6e (このIDを非表示/違反報告)
林檎飴 - 素于葉さん» 事故現場偏、物凄く面白かったです。特に文次郎と仙蔵のやり取りが面白過ぎて腹筋崩壊しそうになりました。無理と言うか...変なお題でしたのにこんな素敵なお話にしてくれるなんて...有り難う御座いました!!これからも頑張って下さい! (2019年6月21日 21時) (レス) id: 2932db30f1 (このIDを非表示/違反報告)
素于葉 - 紫苑さん» いえ、こちらこそ、遅れてしまい申し訳ありません。面白い、と言って頂き大変光栄です! (2019年5月11日 0時) (レス) id: 31c11bca6e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑 - 返事が遅れて申し訳ないです。先程リクエストの方を拝見致しました。面白かったです。10連休全て仕事だったので癒されました。素敵な話をありがとうございます。それでは失礼いたします。時間あるときにまたリクエストさせてください。 (2019年5月8日 20時) (レス) id: 3646c8eb7e (このIDを非表示/違反報告)
素于葉 - 林檎飴さん» はい!有難うございます! (2019年5月4日 21時) (レス) id: 31c11bca6e (このIDを非表示/違反報告)
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