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-教室・3日前・side A-
顧問の藤原丈一郎先生が、分厚い原稿用紙をトントンとして。
丈一郎「読んだで」
あたしは、その向かいの席に座る
A「ど、どうでした？」
丈一郎「まさか戦後ものとはな。政界のフィクサーと経済界のトップが悪事に手を染めて後戻り出来んくなっていく過程が生々しかったわ。スリリングやったし、正義ってなんやろって考えさせられた」
A「そうなんです！最初は国のためにと大義を掲げてやっていても手段を一つ間違えれば人は簡単に手段と目的が逆転してしまう」
丈一郎「移ろう激動の時代に取り残されていく2人になぜか共感してしまうんよなぁ」
A「権力者でも、手に入らないものはあるんです。そこにペーストがあると思って書きました」
丈一郎「うんうん･･････お前はほんまに女子高生か？山崎豊子じゃないよな？」
A「山崎豊子さんいいですよね！憧れです」
丈一郎「･･････」
A「どうですか？これ、先生が気にいってくれたら出版社の担当に持っていこうと思って」
丈一郎「気に入ったで。けど、俺は反対やな」
A「え？」
丈一郎「最年少で文芸賞を受賞した女子高生が2作目に書きあげたんが重厚な社会派小説。きっと、世間はAAを放っとかへんやろうな。新しい才能に、日本中が熱狂する」
A「･･････」
丈一郎「その才能を奉仕する義務を日本中に背負わされて、天才作家らしくいることを強要される。お前はお前じゃなくなる」
A「･･････」
丈一郎「まだ16やろ？お前には、今しか書けへんものを書いて欲しいねん」
A「今しか書けないもの･･････なんですか？」
丈一郎「え、何ってそりゃ、そうやな。高校を舞台にした―」
A「人体実験の話とか！文部科学省に特別に認可されたとある高校では、教育と称して生徒の体を使った人体実験が日常的に行われていて―」
丈一郎「ちゃうわ！」
A「･･････」
丈一郎「もっとあるやろ？等身大の恋愛ものとかさ」
A「恋愛？いやそんな･･････」
丈一郎「青臭くたってええねん。それがいつか宝物になる」
A「･･････先生だって、あたしに女子高生らしさを強要してるじゃないですか」
丈一郎「あくまでもただの顧問の意見や。編集者に持ってくかは、自分で決めや」
そう言って出ていく藤原先生。
A「･･････」
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作者名：Cornet | 作成日時：2021年11月6日 1時
