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気が付いた時、僕は全てを失っていた。


故郷も、友も、家族も。






そこはまるで、阿鼻叫喚。

辺り一面血の海だった。






足元にはかつて家族であった、しかし今は物言わぬ屍となった者が転がっていた。


不思議と涙は出てこなかった。





信じられなかった。


いや、信じたくなかったのだ。





むせ返るような血の匂いの中、僕は独り息をしていた。





ザッ、と誰かの足音がした。


虚ろな瞳でそちらを見やる。





立っていたのは一人の海兵だった。


紫色の短髪に筋骨隆々の男のように見えた。



「小僧、ケガはないか!」



彼は大声で叫びながら、地べたに累々と横たわる屍を越えてこちらにやって来た。









あぁ、今この時、この場所で息をしているのは僕だけではないのだ。





彼も呼吸をしているのだ。









僕は独りではない、ただその事実が僕の心を落ち着かせた。









それからのことは、覚えていない。執筆状態:連載中



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作者名:福沢諭吉に似た一般人 | 作成日時:2016年8月11日 2時

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