REBORN † 愛してるから、明日へ向かって (ページ4)

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山本の手が、僕から離れる。

少しだけ名残惜しい。もっと触られていたい。

……なんて、戦いの最中に思うことじゃないな。

「あんま無茶しねーでくれよ？」

山本の言葉。僕は肯定も否定もせず、下を俯いた。

無茶したい。キミのために。

でも、そのキミが無茶するなというなんて……僕はキミを守りたいのに。

しばらくすると、苦笑いの息が聞こえた。頑として譲らない僕に、呆れたのだろう。

「……じゃー、ちょっくら行ってくるぜ！」

山本はそう言って、Ｂ棟から出ていく。

顔をあげて後ろ姿を見る。刀を背負った彼に、

「…………ケガしないでね」

そう言った。でも、自分でもびっくりするくらいに小さな声で、やっぱり山本には届かなかった。

目に焼き付く、山本の後ろ姿。

彼が居なくなると、足の力が抜けた。そしてまたその場に経たり込む。

壁にもたれて目を瞑ると、目蓋の裏に山本の後ろ姿を見付けた。

凛と背筋を伸ばして、前を見据える。

大丈夫……、多分。山本は強いから。大丈夫。

そのうちに、山本の後ろ姿は黒に塗り潰されて、体の力が急激に抜けた。

疲れた体が休まろうとしているのだ。強い眠気と戦いが、もう目が開かない。

……嫌だ。今、眠ったらまた夢を見る。

子供のときの夢。

なぜ、母親が戦いを教えるのか分からなかった子供の時代。

嫌々、トンファーを握ったときことを……今でも覚えている。

使いなさいと渡されたトンファー。

握ったとき、金属の冷たさに怯えた。

こんなもので人を殴るのかと、母親を上目使いで見上げる。

母親は冷たい瞳で、僕を見下ろしていた。

……昔は、トンファーが嫌いだった。

殴るのなら、素手で十分だったから。僕が今から咬み殺していく人の痛みを少しくらい分かりたいから、素手で良かったのに。

僕は道具を使って人を苦しめることに……抵抗があった。

それでも、あの冷たい視線のせいで、トンファーを使わざるおえなくなっていた。

そうして使っていくうちに、トンファーは僕の体に馴染んで今では手放せなくなっている。

これが無ければ、僕は戦いで命を落とすだろう。手放すのが怖い。

もはやトンファーは、僕の体の一部なのだ。