君を守りたい Part2 (ページ6)

今日:13 hit、昨日:1 hit、合計:151,010 hit

５３（Yside）ページ6

一瞬の出来事だった

トラックの前に飛び出して、恐怖で立ち竦む清くんに太輔が飛び込んでいく

それは、まるでドラマの中の出来事のように、スローモーションで進んでいく

俺は何もできずに…ただ、目の前の光景を見つめていた

太輔の体は清くんの体を包み込み、そのままトラックの向こう側へと消えて行った

「太輔っ！！！」

トラックが俺の目の前で急ブレーキをかけて止まる

我に返って太輔に駆け寄ると、太輔は清くんを抱き締めたまま、道路に横たわっていた

「おいっ！太輔っ！大丈夫かっ！！！

俺の呼び掛けに、ゆっくりと目を開けた太輔は、腕の中の清くんを確認した後、ふにゃりとした顔で笑い

「マジ、ビビった…」

そう呟いた

運転手が、トラックから飛び降りてきて俺達に駆け寄る

「大丈夫かっ？！」

「はい…。大丈夫です。……いきなり飛び出してすいませんでした。」

太輔が頭を下げると、運転手は安心した様に表情を変え、でも俺達に説教をして去って行った

「太輔、ホントに怪我ないのか？」

「うん。全然大丈夫。俺、アクション、結構いけるかも(笑)」

太輔の笑顔に、腰が抜けるくらい安堵した

まだ太輔の腕の中で震えてる清くんを抱えて、車に戻る

車のドアを閉めた途端、太輔が清くんに大声を上げた

「お前、勝手な行動すんなって言っただろ！」

「だって！」

「お前が焦ったって、何にもできねぇだろうが！」

「焦るだろっ！光子が…俺を待ってるんだよ…」

清くんは、涙を堪え震えていた

「清くん…」

清くんが小さな可能性に掛けたい気持ちは痛いほどわかる

でも…多分、もう、光子さんは…

「…分かってる。光子を探し出すことが、どんなに困難か…。もう…この世にいないかもしれないって事も…」

「清…」

「でもっ！俺は、光子を探したい。…70年も探してきたんだ。…やっと、ここまで辿り着けたんだ。いまさら諦めるなんて出来ないっ！」

清くんの必死の叫びが、俺達の胸を締め付けていた

.