７１（Fside） ページ24
清があの世に旅立ってから３日…
「北山さん、まだ目覚めませんか？」
「はい…」
病院の個室のベッドで眠り続ける宏光を佐藤さんと２人見つめてる
あの日、確かに宏光は帰って来た
清が宏光の体から離れ、佐藤さんが宏光の魂を戻した時、一度だけ瞼がピクリと動いたんだ
けれど、結局宏光は、そのまま目を開ける事はなく長い眠りについてしまった
俺達は宏光を家に連れて帰り、目覚めるのを待ちたいと佐藤さんに願った
けれど、宏光の体に栄養を送り続けなければ、目を覚ます前に体が動かなくなってしまうと、佐藤さんはそれを反対した
「そろそろ目覚めてもいい頃なんですけど…」
「……佐藤さん、まさか、間に合わなかったってことは…」
「それはないと思います。北山さんの魂を体に戻した時、ちゃんと北山さんの魂は起きていたんです。」
「じゃあ、なんで…」
「…随分と長い間体を離れていましたから…清くんの時のように体が魂を受け入れるのに時間が掛っているのかもしれません。それに…」
「それに？」
「北山さん、一度天国に行きかけたんです…。」
「え…？」
「北山さんのこの世に留まろうとする気持ちが、一瞬…」
「無くなったんですか？」
「藤ヶ谷さんが、北山さんに会いに行ったすぐ後でした。偶然、私が話しかけていた時で…すぐに気付いて引き留めたんですが…」
『ありがとう』
あの一言を俺に告げたことで、宏光の気持ちが途切れたんだ…
「……俺のせいかもしれません…」
「え？」
「佐藤さん…このまま宏光の目が覚めないって事はないですよね…？」
「……目が覚めない理由が分からないんです。でも、必ず目を覚まさせます。何年経っても必ず。だから、藤ヶ谷さんも諦めないでくださいね。」
「ええ。俺は絶対諦めません。」
「たくさん、北山さんに話しかけて下さい。きっと…北山さん、藤ヶ谷さんの声、聞いてると思いますから。」
眠る宏光の頬にそっと触れてみる
少し赤みを帯びたその頬は、いつも通り温かくて…
ぷっくりとした唇も今にも動き出しそうなのに…
「宏光…いつになったら、目を覚ましてくれるの？そろそろ起きて、『太輔』って呼んでよ。俺…宏光と離れたくないから…あの時、プロポーズしたんだよ？」
どんなに呼びかけても宏光の瞳は俺を映すことはなかった
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作者名：MISA
| 作成日時：2015年2月5日 11時
