７０（Fside） ページ23
佐藤さんに連絡を入れると、「待ってるから」とそう言ってくれた
清を連れて、佐藤さんの待つカフェへ向かう
その車の中では、誰も一言も話さなかった
やっと宏光に会える
その嬉しさはもちろんだけれど
たったひと月でも、全てを共にした清
あんなに憎かった清との別れがほんの少し寂しく思える自分がいた
もう見慣れてしまった『臨時休業』の札
多分、見るのはこれが最後…
清を連れて皆でカフェに入る
「お待ちしてました。…今日は…皆さんお揃いなんですね。」
いつもと変わらない佐藤さんの優しい笑顔
「はい。皆で清を見送りたいと思って…」
俺の言葉に佐藤さんは微笑むと、ゆっくりと清に向き直った
「もう、後悔はない？」
「はい。皆さんのおかげで、光子の居場所がわかりました。」
「そう。…じゃあ、いいのね？」
「はい。お願いします。」
佐藤さんは俺達を奥の部屋に案内し、いつものように清に横になるよう指示した
「最後に言い残す事はない？」
「…皆さん、本当にありがとうございました。それから…本当にごめんなさい。」
深々と頭を下げる清
そして…
「ガヤさん、北山くんと幸せになって…。大切な人を失うって…心が引き裂かれそうなくらい辛いから…。って…僕が言える事じゃないですね…」
俺に向かってそう告げると、俯いた
分かってる
宏光を失う事の怖さは俺が一番…
「ありがとう。宏光の事、もう離さない。大切にするよ…清くんみたいに…」
「ガヤさん…」
「光子さんに、あっちで会えるといいな。」
「はい。」
清がゆっくりと体を横たえる
それを見て、佐藤さんが微笑んだ
「清くん。光子さん、あの場所で清くんを待ってるみたい。…きっと会えますよ。」
微笑んだ清が目を閉じた時、すーっと一筋の涙が頬を流れて落ちた
「さようなら。清くん…」
佐藤さんがそっと清の額に触れる
その瞬間、俺達の目の前に白い影が現れ、俺達の頭上にゆらゆらと留まった後、消えていった
「行っちゃったね。」
「うん。」
清…
どうか天国で光子さんと幸せに…
そして
宏光…
早く俺の所に…戻ってこい…
.
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作者名：MISA
| 作成日時：2015年2月5日 11時
