22．はしご。 ページ22
.
「帰らなきゃ。」
冷たいアスファルトに1歩踏み出したら
私のパーカーのフードを後ろから引っ張られた。
「送ってくからちょっと待って。」
思わずつんのめって止まった私に、さっきより真面目な顔した先生。
先生はコンビニに入っていって、レジでタバコを買ってる。
ガラス越しにぼけっと眺めてたらフードの中でなにか重たい物が動いたのがわかった。
ぐっと手を伸ばしてとってみたら、いつものカフェラテ。
「いみわかんない……。」
そう言わないと、自分の心を誤魔化せなくて。
「あの人さあ、さっき別のコンビニ寄って、わざわざこのカフェラテだけ買ってきてさ。」
静かな夜の空気に、虫の音だけが響くそこで
沈黙を破ったのは、
にの、さん。
「わざわざ？って聞いたら、このカフェラテが好きみたいっつって笑ってさ。」
煙草を消しながら、煙まじりに喋る。
確かにいつも先生がくれるカフェラテは、私の働くコンビニの商品じゃない。
「俺、大野さんがコンビニ寄りたいっていうからてっきりここかと思ったら、2軒回るし、どゆこと？って。」
「…………。」
「ここで貴方に会って、あーそゆことねってさ。」
パコっと音を立てて閉じた携帯灰皿をポケットにしまったところで、
煙草を手にした先生が戻ってきた。
にのさんが言った"そういうこと"ってどういうことなのか、私には分からない。
解りたいとも思わない。
だってそれが解けたら消せなくなってしまう。
「カフェラテ気づいたあ？」
ふにゃっと笑いながら、私の手元を見る先生。
私はこれを好きとか1回も言ったことないけど
好きそうに見えたなら、多分それはカフェラテに対してじゃない。
先生から貰える"このカフェラテ"限定で好きなだけ。
「……はい、ありがとうございます」
「乗りなー」
と少し遠くから声がして、見たらにのさんはもう車の近くにいた。
多分にのさんの車。
先生とは違って黒っぽくて平たい感じの車だった。
言われるがまま乗り込んだら、先生も何故か後部座席に乗り込んでくる。
「なんでおっさんも後ろなんだよ」
ってルームミラー越しに言ったにのさんに、
「えー、隣が良かった」
とまた意味がわからない返答をした先生。
「大野さん家の近くだよね？」
と車を動かす。
私は動悸が治まらないまま、
「たぶん、」
と小さく返事をした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
憂(プロフ) - みやさん» みやさん。コメントありがとうございます。こちらの私情であるにも関わらず応援して頂きまして、本当にありがとうございます。これからも先生と主人公ちゃんをよろしくお願い致します( •̥-•̥ ) (2022年12月1日 9時) (
レス) @page40 id: 39a6e0a5de (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 憂さん、はじめまして せつと申します。人生最大ゴタゴタの中素敵なお話を紡いでくださりありがとうございます。スローでもよきよき♪待ってますので 憂さんのペースでどうぞ。いい子で次のお話待ってますね。 (2022年12月1日 9時) (レス) @page40 id: a88f73c135 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：憂 | 作成日時：2022年11月4日 3時
