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和也は、私の態度に何も言わなかった。
何を言うわけでもなく、「これも食ってみ？」
普通の顔をして、私にチャーハンを、勧めた。
「ここのチャーハンすっげ美味いのよ」
「あ…ホントだ、おいしい」
「だろ？」
ってドヤ顔。
「そのドヤ顔ムカつくわー」
そう言ったら
「黙れ、まともな料理も作れねぇくせに」
とか言ってきた！
「は！自分だって作れないくせに！」
「オレは作らないだけですよ
お前オレの父ちゃん誰だと思ってんのよ」
「…日本料理の先生…？」
「クフ笑 分かってんじゃん」
「、でもそれは和也のお父さんの話じゃん！
アンタが料理できるかって話してんの！」
「あー、うるさいうるさい。
もうわかったから黙って食え」
とかいう、くだらない言い合いになって
和也に上手く話をすり替えられたから。
私は忘れてたんだ。
和也は、本当の気持ちを隠すのが上手いってことも
なんでもないフリして笑ってるその笑顔の裏で
いつも自分の感情を押し殺してることも。
「そういえばさー、お前とJがデザインしたおれらのグッズあったでしょ」
和也が思い出したようにはなしだす。
「うん。てかそれいつの話よ」
もうアンタらツアー終わってだいぶ経ちましたけど？
「忘れた」
「忘れたんかい」
…私は鮮明に覚えてるけどね。
なんて言えるわけもなく
話は進んでいく。
「まぁまぁまぁ。
んでさ、そのグッズ？
売れ行きがあんまり良かったもんだから
お前とまた仕事したいって、Jが」
「…は」
「光栄デショ。またおれらと仕事できんのよ？」
「……はい…光栄です…」
「だからその間はなんだよ笑」
ケラケラと笑う和也に、私もアハハ、と笑い返す。
でも私の苦笑いに、きっとカズは気づいてた。
また和也たちと仕事をするということは
また和也の世界に足を運ばなければならないということ。
それが私にとって、どれほど苦痛かということを。
こないだは偶然だったし、
ピンチヒッター的なところもあって、あまり意識していなかったけど。
今回は二度目で、ましてや先方のお誘い。
会社の利益を考えれば、和也の事務所と仕事をするのはとても重要で。
私の一存でそんな重大プロジェクトを拒否するわけにはいかない。
…でも。
自分より大事だった幼馴染を。
永遠に私の隣から奪った世界に
また関わりにいくことは。
どうしても、どうしても。
胸が引き裂かれるほど苦しいんだ。
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作者名：くぅ。
| 作成日時：2016年9月18日 22時
