＊完結＊《君が好き》【K.N】 (ページ15)

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和也たちのグッズの仕事はいつからになるのか。

その詳細はまだ決まってないみたいで

だからこの話はくれぐれも内密にしておけ、と
和也が言ったから

私の心にも、少しだけ余裕ができたことは否めないけど。

また話が来たら、全力で頑張ろうと

和也たちのために役に立てたらいいなと、思う。

撮影が忙しいという和也とは休みは合わないけど

あのオムライスを作った日から、時間が合うときは私が手料理を振舞うことになっていて

今日は早く帰れるからハンバーグを食べたいと和也が言った。

仕事帰り、スーパーに寄って必要な物をカゴに入れていく。

ハンバーグの材料をカゴに入れては、和也に振る舞う瞬間を想像したりして。

美味しいって言ってくれるかな、なんて

自然と頬が緩んでる自分に気づいて恥ずかしくなった。

…今思えば、なんて浮かれポンチだったんだろうと

自分の浅はかさに泣きそうなるけれど。

家に着き、部屋着に着替えて夕飯の準備をする。

ここ数日で殺風景だったこのキッチンも見違えるほどまともになった。

番組の収録で飲んだ野菜ジュースが飲みたいとかで和也が買ってきたミキサーや

卵を混ぜるための菜箸とか

チャーハンを作るための中華鍋だってある。

私はこないだ買ったばかりのボウルを取り出して、そこに今買ってきたばかりのひき肉や炒めた玉ねぎたちを混ぜていく。

和也は8時には帰ると言ったから、それに合わせて料理をする。

ただでさえ待つのが嫌いな和也を、あまり待たせなくて済むように。

「できた！」

ハンバーグもご飯も味噌汁もできて、付け合せのポテサラも完璧。

あとは和也が来るのを待つだけ…だった、はずなのに。

9時になっても10時になっても、和也は帰って来る気配がない。

何度となくケータイを確認しても、なんの連絡もない。

いつもなら仕事が長引くとき、短いメールくらいは届くのに。

おかしいなぁ…と思いながら

どんどん冷めていくおかずを見つめて、虚しくなる。

せっかく買い物までして作ったのに。

帰って来る時間に合わせて用意したのに。

早く帰って来るって、言ったくせに。

もう私だけ食べようと思って箸に手を伸ばしたときには、11時を回っていた。

ご飯を一人で食べるのは、こんなに寂しい寂しいものだったっけ、なんて思って

初めて私の中に住み着いた和也の大きさを知り

そして同時に

私たちの何かが壊れる音を、聞いた気がした。