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お昼頃に帰ってきた和也は、今朝とは見違えるほどキリッとした髪型をしてた。
…あぁ、アイドルの和也が帰ってきた。
なんて思って、同時にチクンと胸が痛む。
これだけ一緒にいるようになったのに
いまだ私は、"アイドルの和也" を受け入れられてない。
そんな自分の懐の小ささにがっかりするけど。
この十数年、ずっとそれで生きてきたら、もうそれが普通で。
どうしてもアイドルの和也を好きになれないのは
それが私の青春時代の、トラウマだからだ。
「…寝癖じゃないんだ…」
ただいま、とリビングに入ってきた和也を見て思わず呟くと
「おま、普通はおかえりだろうよ」
って呆れた顔。
「…、おかえり」
「ん。はい行くよ」
「…え、どこに？」
「はあ？お前ん家でしょ。
着替え取りに行くって喚いてたの誰よ」
「……私です」
そうだった…忘れてた。
「なに見惚れてんの。
早くして、もう行くよ」
って部屋を出て行こうとする和也を慌てて追いかける。
あまりにも和也がアイドルだから見慣れなくて。
無意識にジッと見つめていた。
…着てる服は、ダサいくせに。
なんでそんな無駄に色気を振りまくかな。
だから嫌なんだ。
こいつといると、どんどん自分が嫌いになる。
地下の駐車場に時間差で行くと、目の前におっきな黒い車がとまった。
…なに！
ビックリして身動きを取れずにいると、後ろ側のドアが開いて、和也が顔を出す。
「早く乗りなさいよ」
「…う、うん…」
オドオドしながら、和也の隣に乗り込めば
「コージ、いいよ出して」
「はい」
和也がそう言って、運転席から聞き慣れない野太い声がして
マネージャーさん、かな…
知らない人がいる状況が気まずくて
黙ったまま身を縮める私。
なのに隣の和也は思いっきり寛いでて、倒したシートに身体を預けてゲームしてる。
…こんにゃろ…私の気も知らないで！
車の中は右も左もカーテンで仕切られてて、外の景色を見ることもできないし。
知らない人がいるから、和也に話しかけることもできない。
ポッケに入れたままにしてきたスマホが唯一の救いで、ラインを返したりしてるうちにウトウトしてきて
あ、これはやばい。
って思ったのを最後に、意識を手放した。
「……A」
「……zzz」
「…ったく…起きろや！」
「…ふぇっ！？」
バッ！と目を開けると、目の前に和也のドアップ。
なになに？！
なにが起こったの！
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作者名：くぅ。
| 作成日時：2016年9月18日 22時
