桜雨 ページ3
シャワーの音が聞こえる
俺は脱衣所に一応俺の服を置いといた
サイズ、合うかな…
そして彼の来ていた服は今、乾かしている
俺はそっとさっきのソファに座り込んで、顔に手を添えた
…熱を持っている
心臓に手を置くと脈がとても早くなっていた
「どうして…」
わからない
彼の顔を見てから、声を聞いてから、様子がおかしくなってきた
この音を、今外で降っている雨の音でかき消してしまいたいや
そう思っていると、ドアが開く音がした
俺は急いで立ち上がる
「どうだった?」
「…気持ち、よかった」
「それはよかった」
するとグゥとお腹の鳴る大きな音が聞こえた
その音の正体は彼のお腹からだった
「お腹減った?」
コクリと頷く
ちょうど夕飯を作っている時だったからよかった
「それじゃ、そこら辺で待ってて。
いますぐ作っちゃうから」
作っていたのはカレー
クツクツと煮込んでいると視線を感じた
それは緑色の瞳だった
「…どうしたの?」
「美味しそうな、匂いがしたの」
俺はその言葉にそっと微笑んだ
「あと少しだよ」
次の瞬間、窓がガラッと開いた
…窓が⁉
不審者かと思い、そっちに向かうと透明な羽根がちらりと見えた
「侑李…」
彼が名を呟く
侑李「圭人、なんでここにいるの?」
彼の名は圭人、というらしい
侑李「圭人が自ら人間に会いにいくって珍しいじゃん」
えっ…?
「圭人が人間に…って?」
侑李は俺を見る
侑李「あっ、さっきの」
「侑李、どういうことなの?」
侑李は圭人を見る
圭人はオロオロしていた
侑李「まさか…何も話してないよね?」
「うん、何も聞いてないよ」
侑李はピンクの瞳をそっと伏せた
侑李「名前は?」
「へっ?」
侑李「名前。
僕たちだけ教えるのはおかしいでしょ?」
そういうことか
「裕翔、中島裕翔だよ」
侑李「裕翔、今日のことは全部忘れて」
侑李は突然そんなことを言う
「ぜ、全部⁉」
侑李「僕たちの存在も…あの森も…全部」
するとまたグゥと言う音が聞こえた
ただ、今度は圭人じゃない
「…食べてく、カレー?」
侑李「…うん」
19人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:慧jump | 作者ホームページ:http://wakabassl
作成日時:2020年8月3日 23時