審神者就任一日目 後その二 ページ19
元は綺麗な模様がついていたのだろう薄汚れた襖を思い切り横へ滑らせる。
ふすまの前に居た時から分かってはいたが、相当な人数が居るな。これで全員ではないというのだから恐れ入る。
聞き慣れた刀を鞘から抜く音も聞こえた。
ふむ、さすがにこれだけを相手にするのは無理があるが…
視線を走らせると、数十もの目が一斉にこちらを見る。
浮かんでいるのは…「拒絶」「恐怖」「殺意」が圧倒的多数だな。いくつか「好奇心」もうかんでいるように見える。物好きな。
「審神者様ああ!」
「(うるさい)」
逃げるだけなら問題ないから喚くな。
そう言おうと自分の後方へ視線を動かす。
刹那。
人体の急所である首にチリリと感じる殺意。
もう体が動くのに任せるまま斬りかかってきた下手人を畳に叩きつけた。
生憎だが刀を持った相手を投げ飛ばすという動作は前世で何百何千と見てきたんだ。そんな直線的な攻撃では俺は殺せない。
ふと、狭霧山で先生に何度も転がされたあの訓練を思い出す。先生に刀を向けるのを嫌がっている場合じゃなかったからな…
と考え事をしている場合ではない。投げ飛ばされたまま呆然としている男を観察する。
頭に血が上っていた訳ではなさそうだし、一番初めに動いたのがこの男ということだろうか。つまり、この中でも強い方?
何より、仲間を守るために不穏分子を排除しようとする意気は好ましいものだ。
皆目から光は消えていないし。
僅かにしびれの残る腕を何度か振る。自分より体格のいい相手だったとはいえこの程度で痺れるとは鍛え直しだな。
「審神者様ぁ」
あ、忘れてた。
こんのすけに呼ばれて思い出す。
そういえばここに来る前に離に寄れと言われていたんだった。
そこで手入れなど昨日の確認をして、自衛用の刀を手に入れてからここへ来ると言う話だったような?
「離に向かいますよ!順番はズレてしまいましたが!」
「(忘れていて)すまない。案内してくれ」
「刀剣男士様方はどういたしますか?」
「この程度(の怪我)なら(後で手入れしても)問題ないだろう。」
そのまま背を向けて部屋を出て、きちんとふすまも閉めておく。
部屋を出ても追ってくる様子はない。
相手の戦力が分からないうちは無闇に攻めないのはいい事だな。自分の中で初めて見た刀剣男士達の評価を上方修正する。
ブラック本丸の被害者は人を見たら何も考えずに切りかかると聞いていたのだがそうでも無いらしい。
相手にするなら理性がない方が楽だったのだが……
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ふわな - あの某掲示板感が面白いです!更新待ってます! (2022年8月12日 15時) (レス) @page8 id: 71a4ce2144 (このIDを非表示/違反報告)
花 - 続きを寒いなか正座で待機中 『フクフクフク……………どこ?』 (2021年2月6日 22時) (レス) id: b89caa16cb (このIDを非表示/違反報告)
めがね - つ・・・続きを・・・O( ° O ° O) (2021年1月23日 22時) (レス) id: af4084f8cb (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー大好き!!(プロフ) - 続きがとても気になります!!更新頑張ってください!! (2020年10月11日 23時) (レス) id: 2d39102061 (このIDを非表示/違反報告)
燐華(プロフ) - 更新ありがとうございます!これからも頑張ってください! (2020年7月12日 14時) (レス) id: 0be41e7afe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トイプードル | 作成日時:2019年9月24日 11時