参拾肆ノ型─玄樹に会えなくなるなんて ページ39
神宮寺サイド
「鬼のクセに…やってくれるね
ほんと、玄樹の手握ってなくて良かったよ」
「強がるな
本当は死ぬのが怖いんだろう？
もっと泣き叫べ
もっと絶望しろ」
「誰が泣き叫ぶかよ
てゆうかいい加減姿見せたら？
卑怯だね、君たち鬼は」
今俺は歩いている途中に鬼に拉致され、捕まっている
血鬼術で拘束されて、逃げれない
ほんとに、玄樹の手を握ってなくて良かったよ
玄樹はパニック障害や俺が人質にされたりして戦えないだけで、本当は強いんだ
だから死ぬだけなら俺だけでいい
むしろ、俺が死んだ方が玄樹はもっと戦える
良かった、巻き添えにしなくて…
あれ、俺…
泣いて…る…？
膝にポロポロと水が垂れる
目が熱い
本当は俺、死ぬのが怖いのかな…？
いいや、違う
玄樹に会えなくなるからだ
大好きな玄樹に、
紫耀、廉、海人、岸くん
会えなくなるなんて
絶対嫌だ
死にたくない…！
「ふはははは！
もっと、もっと怖がれ…」
鼓膜が破けそうなほど低くて圧力のある声が聞こえると、
暗闇から鬼が姿を現した
その姿は、着物を着た幼女のよう
しかし、その幼女からは今にも押し潰されそうになる殺気が溢れていた
そして、その瞳には
上弦の陸の文字
「私は人の失望、絶望、苦しみが大好きなんだ
だからお前を絶望に落としてから死なせようとした
お前の絶望はもう思う存分味わった
だからもうお前は…
用済みだ」
鬼はその辺にあった大きな岩を浮かせ、
俺の頭の真上にそれが到達する
あ、俺、本当に死ぬんだなぁ
せめて最後に、
玄樹に会いたかったなぁ…
…………
最終選別の二日目
鬼が倒せなくて、
体力も精神も限界だった俺は、鬼から走って逃げ回っていた
しかし、背後には巨木
もう、逃げられない…！
鬼が俺に向かって鋭い爪を向けた
「うわあああ！！！」
死ぬかと思ったその時だった
「恋の呼吸 陸ノ型 猫足恋風」
淡い桃色の斬撃が、美しく空気の筋を通り、鬼の首に届く
そのまま鬼は灰となって散った
今の鬼を倒したのは…誰…？
キョロキョロと周りを見ると、そこには短髪の美少女がいた
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作者名：秋麗司 | 作成日時：2023年7月4日 18時
