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「……いる。」
本当は、ずっと期待しかしていなかったのだと思う。
いねーよ、っていつもみたいに笑って明るく言ってほしかった。
それなのに、Aの目の前の宇髄はやけにはっきりとそう告げる。
やっぱりダメだ。
もうこれでは振られたも同然ではないか。
Aの握りしめた手にポタ、と水滴が落ちる。
涙と分かるまでにはそう時間はかからなかった。
ここ最近泣いてばかりだなと内心呆れながら、宇髄の顔が見たくなくて美術室を出ようと椅子をガタッと倒して走り出した。
「は?おい、A!」
無我夢中に廊下を走るが、後ろから宇髄が追いかけてくる音が聞こえる。
お願いだから、放っておいて欲しい。
しかし、そんな願いは宇髄には届かない。
どこだか分からない空き教室に逃げ込んだが、当たり前のようにAより足が速い宇髄に追いつかれた。
走って教室の中に入ってきてパシ、と腕を掴まれると、そのまま扉の前に立ち逃げ道を塞がれる。
「待てって!」
『や、だ……!』
「いいから落ち着け!俺の話を最後まで聞け!」
いつまでも宇髄の顔を見ないAに苛立ったのか、Aの両手を掴んで持ち上げ無理やり目を合わせられる。
その瞬間にAの目には、ごく、と唾を飲んだ。
目の前の宇髄が二重に見えて、片方は眼帯をしていたから。
誰だ、これは。
「ったく、地味に勘違いしてんじゃねえよ…」
Aが混乱している間も宇髄は続ける。
「良いかよく聞け。…俺が好きなのはお前だ、A!」
『……っ!?』
______俺も好きだ、A。
______愛してる。
宇髄の告白と共に聞こえてきたのは、別の声。
だが耳ではなく脳内に響き渡るその声は、確実に宇髄だ。
何故宇髄の声が重なって聞こえるのだろう。
そして何かが、思い出せ、思い出せ、と頭の中に呼びかけている。
その瞬間に、またあの映像が流れ出す。
しかし今度は頭が痛くない。
知ることに拒絶を、していない。
突然映像がピタ、と止まり今まで一度も見える事がなかった相手の顔が見えた。
.
______来世は必ずお前だけを愛す、A
.
あぁ、そういうことだったのか。
分かったよ炭治郎。
『………宇髄、さん』
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甘利 柚(プロフ) - 美沙那さん» コメントありがとうございます、、!やっぱりロスになりますよね…頑張ります! (2022年2月15日 12時) (レス) id: b1ab138b18 (このIDを非表示/違反報告)
甘利 柚(プロフ) - ゆんさん» やっとちょっと復活してきました…!ゆんさんの作品見てもっと癒されようと思います… (2022年2月15日 12時) (レス) id: b1ab138b18 (このIDを非表示/違反報告)
甘利 柚(プロフ) - 蓬莱寺さん» 悪魔でページ番号をふっているだけですので、バレンタイン編を挟んだらそうなってしまいました…分かりづらくて申し訳ないです、、! (2022年2月15日 12時) (レス) @page31 id: b1ab138b18 (このIDを非表示/違反報告)
美沙那 - 遊郭編終わったの辛いですよね...。私も絶賛宇髄さんロス中(?)です😭更新はゆっくりで良いので此れからも頑張ってください!! (2022年2月14日 16時) (レス) id: bb5e1907d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - 甘利 柚さん» 柚さーん!新作頑張りますね。ありがとうございます!……もう昨日ので宇髄さんロスなの私もなので思わずまたまたコメントしちゃいました…私も朝の5時まで眠れず…(笑)お互いロス症状半端ないですね。落ち着くまでゆっくりやっていきましょ…😢 (2022年2月14日 9時) (レス) @page32 id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚 | 作成日時:2022年2月7日 9時