氷のように冷たく雪のように暖かい［鬼滅の刃］

43 死なせない ページ46

「伊之助 動けーーーっ！！！

煉獄さんのために動けーーっ！！！」


炭治郎の声に嘴平くんは動いて

斬りかかろうとした瞬間

私もろとも轟音と共に吹き飛ばされる


鬼は駆け出す

逃げるな！逃げるな！

夜明けが近い

だからって 逃げるな！！


『逃げるなぁぁぁぁ！！！』


私の声と共に

炭治郎の刀が私の横を通り過ぎて鬼に突き刺さる

その刃は頸を外す

あぁ ああ…


「逃げるなァ！！！」


炭治郎の叫びが嘆きが響き渡る


「いつだって鬼殺隊は

お前らに有利な夜の闇の中で戦っているんだ！！

生身の人間がだ！！

傷だって簡単には塞がらない！！

失った手足が戻ることもない！！」


『逃げるなぁ！逃げるなぁぁぁぁ！！』


「『卑怯者！！』」


卑怯者！卑怯者！


「お前なんかより

煉獄さんの方がずっと凄いんだ！！

強いんだ！！煉獄さんは負けてない！！

誰も死なせなかった！！」


『煉獄さんは戦い抜いた！！守り抜いた！！』


「お前の負けだ！！煉獄さんの勝ちだ！！

うあぁぁぁああああ！！！！」


溢れ出す涙は止まらない

私はまた助けられないのか

また目の前で人を死なせてしまう

いやだ これで何度目だ

隊員を目の前で失くすのはもう嫌だ

助けるんだ 助けるんだ


「もうそんなに叫ぶんじゃない 傷が開くぞ

君も軽傷じゃないんだ

竈門少年が死んでしまったら俺の負けに

なってしまうぞ こっちにおいで

最後に少し話をしよう」


『煉獄さんが死んでも

誰も死ななかったことにはならない！

最後なんて言うな！

最後なんて言わないでくださいよ！』


私は激しく取り乱していた


「珍しいな 君がそんなに泣くのは」


私は煉獄さんに駆け寄った

炭治郎も近くに寄っていた


『話なんて後でいくらでも聞く！

だから喋るな！

死ぬな！私が絶対死なせない！！！』


「…もういいんだ もう俺は死ぬ

だから今のうちに喋る」


伝えたいことがあるなら生きろ

生きて ちゃんと生きて伝えろ


目の前でもう失うのは嫌だ


『死なせない！

私は、私は絶対にもう誰も死なせたくない』


そして刀を抜いたのだった

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