体育 壱。 ページ4
【有一郎Side】
四時間目は、待ちに待った体育の授業だ。
今日の授業はリレーらしい。男子のリレーが終わった後に、女子のリレーがある。
Aは大丈夫だろうか。運動神経はあまり良くない方だ。
「なぁ。桐宮ってフツーに可愛くね?」
「分かる。萌え袖になってんの可愛いよな」
「それに体操服になると分かるけど、結構胸もあるよな」
……は?
近くから声が聞こえてきたので、眉間にシワを寄せつつもそっちを向いた。隣を見ると、無一郎も同じようにしている。
「おいお前ら、今なんて言った?」
「君たちみたいな奴がAのことそういう目で見るなんて、天罰が下るよ。……次言ったらどうなるか分かってるよね」
ふざけるなよ。
Aが可愛いのは事実だけど、気持ち悪い目で見るのはやめろ。
Aは俺の大切な人だ。
そんな目で見たら許さない。
「うっわ、聞こえてた」
「すみませんもう見ません!」
男子たちは慌ててその場を去っていった。
「最低だな、あいつら」
「目潰ししてやれば良かった」
Aの方を見やると、校庭の端で準備運動をしていた。……うん、いつも通り可愛い。
「おーい、Aー!」
『……あっ、無一郎くんに有一郎くん!今からリレーだよね?応援するから、頑張ってー!』
笑顔で手をぶんぶん振ってくれた。
……うっわ、かわい。何だあれ天使か?
「兄さん、俺と走る順番同じだよね?絶対負けないから」
「こっちこそ負けないからな。Aに応援されて、負けるなんてありえないだろ」
無一郎は弟だ。
絶対に、負ける訳にはいかない。
【ASide】
「位置について、用意……」
パァン。
スタートの合図が鳴らされた。
『がんばれー!負けないでー!』
女子たちは必死になって応援している。私も負けずに声を張り上げ、応援する。
何人かが走り終わり、無一郎くんと有一郎くんにバトンが渡った。
『無一郎くーん、有一郎くーん、がんばってー!』
誰よりも大きな声を出した。
周りの女子の黄色い声援に掻き消されないように、手をメガホンの形にして必死に応援する。
『二人ともー、応援してるからねー!がんばれー!』
頑張れ以外に言う言葉がない。
語彙力が無いと、こういう時に困る。
『がーんーばーれー!』
……うわあ、恥ずかしい。
馬鹿みたいに同じ言葉の繰り返しだ。
こんなんじゃ、二人の幼なじみとしても駄目駄目だよ。
『……あ』
二人が私を見て微笑んだ。
本当に、なんて素敵な幼なじみだろう。
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【夜桜】・しーちゃん・ - わぁ…!もう感動したぁ…! (2020年8月14日 13時) (レス) id: 031218a0d7 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 少し嫉妬しそう。ぷくー (2020年4月17日 0時) (レス) id: 5656ed0b69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆん - うふふうふふふふふふニヤニヤニヤにや (2020年4月9日 15時) (レス) id: 76b4a4436f (このIDを非表示/違反報告)
飴(プロフ) - やばいっ!無一郎君も好きだけど、有一郎君派に行きそう/// (2020年4月6日 21時) (レス) id: 2eacc9981a (このIDを非表示/違反報告)
レイン(プロフ) - 連載お疲れ様でした!最後凄い泣けました……(´;ω;`)これからも頑張って下さい! (2020年4月6日 21時) (レス) id: da75407877 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:karin | 作成日時:2020年2月14日 21時