今日も彼女は想うだけ【煉獄杏寿郎】

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翌朝



「しのぶちゃん〜〜！おはよう！！」

「おはよう····って、そんなに走ったらまた発作出ちゃいますよ？！」


同じクラスの胡蝶しのぶちゃん。

キラキラした蝶の髪飾りが特徴的な優しくてちょっぴり毒舌な女の子。いつも行動を共にしている。


「このくらい平気平気！」

「そう言ってこの前も倒れたでしょう！」


喘息患者にとって季節の変わり目や、気圧や気温の変化が激しい梅雨時期は本当に地獄だ。
寒暖差も大きく普段よりも発作が出やすい。
加えて私の場合はすぐに風邪を引くから少し厄介だった。

入学当初に比べたらだいぶ良くなったけど。


◇


教室に鞄を置いて、真っ先に向かう先は中庭。


「あちゃー……」


数週間前に綺麗にした花壇がまた荒れていた。
少し目を離すとすぐにこれだ。

ぽかぽかした日差しを感じながらお花に水やりをしていると


「お！乙葉じゃないか！」


上の方から私を呼ぶ大きな声が聞こえた。
ゆっくり顔を上げると二階の窓から、ひらひらと手を振る煉獄先生の姿が。


「先生！おはようございます！」

「朝から花壇の水やりか！偉いぞ！！！
みんなも乙葉を見習いなさい！！！！！」


その声は学校中に響き渡り、廊下を歩く生徒の視線が一気に中庭へ集まる。木に止まっていた小鳥でさえ驚くあまり、空に羽ばたいて行くほどのボリュームだった。


「……っ」


咄嗟に水やりを中断して私は木の影に隠れた。


「む？！なぜ隠れる乙葉！！」


恥ずかしいからですよ！と言い返すことすら恥ずかしくて、私はそのまま先生をシカトした。



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