今日も彼女は想うだけ【煉獄杏寿郎】

「 いつも隣で 」 ページ33

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会議が終わり、職員室



「煉獄ー」

「なんだ？」

「教室に乙葉の通学カバンがあるみてェだが
 こんな時間までどこで何してんだァ？」


咄嗟に時計を見ると時刻は19時を過ぎていた


「乙葉！」


急いで中庭に行ってみても彼女の姿はなく
地面にはジョウロが放ったらかしにされている

彼女がこの状態で帰るはずもないし
ましてや勉強熱心な彼女が
通学カバンを置いて帰るなんて事はありえない

嫌な胸騒ぎがして
中庭付近、廊下、教室、体育館裏を
探し回るが彼女の姿はなかった




──20:00



「いたかァ？」

「いや、いない」

「ったく世話のやける奴だなァ」



北階段をのぼっている途中に
ふと屋上階段を思い出して行ってみても

そんな期待は儚く消える

いつもここにいた彼女がいない

一人の屋上階段はより一層静けさを増して
まったく別の場所にいるような気持ちになる

喪失感のような空虚に、胸が押しつぶされそうで

「乙葉」

名を呼んでみても、彼女が姿を現すことはなかった






ここで初めて彼女の涙を見たあの日


───前向きな先生を見ていたら
私も先生みたいに頑張らなきゃって

そう言って君は泣いていたが
俺が諦めずに前向きでいられたのは
君が、乙葉が、隣で励ましてくれたからで


───先生の想いが届いたんですね

これもすべて君が、乙葉が
親身にアドバイスをしてくれたおかげであって









その君が今隣にいない







いつも隣で笑っていた君がいない








それはあまりにも寂しくて仕方がない









──20:30





「家に連絡入れるかァ？」


「そうだな……
 最後にもう一度だけ中庭を見てくる！」









そう伝えて中庭に戻っても

彼女の姿はなく

地面に放ってあるジョウロを拾えば

それは案外小さくて

いつも大きく見えていたのは

彼女が持っていたからか

なんてことを、ふと思う




そんな俺の横で

橙色と黄色のマリーゴールドが

儚く揺れている








なぁ、乙葉




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