第三幕 ページ4
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買い物に出かけて、翔さんのスーツをクリーニングに出して
1週間後に迫ったバレンタインのために売り出されてるチョコレートを何とはなしに眺めたりして
翔さんと一緒に暮らしているとはいえ、彼は仕事で忙しい。
今日のように帰ってくるのが遅いことも珍しいことではない。
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ゴールデンタイムと言ったところで、やってる番組はどれもこれも似たような内容
画一化が進む箱の中で、たいして面白いトークが展開されているわけでもないのに
ゲラゲラと笑う人々の笑顔すら皆同じに見えた。
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ツマラナイ
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早めに電気を消して、ベッドに潜り込む。
毛布に包まっている瞬間が一番心安らかだなんて悲しいような
ぼんやりして、徐々に眠くなって
そう……と意識を落としていく。
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意識が薄れる瞬間、戻る瞬間というのは
舞台の幕が下りて、また上がるような
気休め程度の暗闇を挟んだところで次の幕はあくまで前の幕の続編だ。
今日も昨日の続編で、明日も今日の続編だ。
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ギシ……と軋む音は、ベッドに誰かが来た音であって
私の心が軋む音であるわけがない。錯覚を起こしたりなんかしない。
意識を失ってからどれぐらい時間が経っているのかは分からないけど
翔さんが帰ってきた。
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翔「おやすみ」
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私が眠っていると思っているのか、囁いて
一瞬だけ唇掠める口付けに
一体何の意味があるのかなど、もう考えはしない。
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私は、この人の花嫁となる。
淑やかな娘は良き妻となり、賢き母となる。
与えられた役割を果たすだけなんて、スポットライトを一身に浴びる役者ではなく
つまらないと感じた雛壇に座る演者に近い。
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ならば徐々にフェードアウトするような一日の終わりではなく
テレビの電源を消すようにプツと。一瞬で終わるほうが似合いではないのか。
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目を閉じたまま、翔さんの腕の中に捕らわれながら
そんなことを考えて、やはり意識は皮肉に少しずつ遠ざかる。
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なるちゃん(プロフ) - 読了後、すばらしい！と叫びました！三人三様の愛が苦しく切ない。とてもよかった。ありがとうございました！ (2018年9月4日 12時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
咲．(プロフ) - 覚えました。自分の語彙力の乏しさを悔しく思いますが…全てが不幸だ、と言い切れないこのお話がとても素敵だな、と思ったし素敵なお話に出会えて私は幸せだな、と思いました。本当にありがとうございました。 (2016年2月23日 0時) (レス) id: 7f46cc82f6 (このIDを非表示/違反報告)
咲．(プロフ) - コメント失礼します。"温かく苦しい"まさにその通りだと、最後まで読み思いました。彼が病気でなければ。臓器提供をしたのが彼でなければ。おばあさんとの出会いがなければ。ほんの僅かな点と点の違いで、人生がこうも動くのか、と目の当たりにしたような錯覚を (2016年2月23日 0時) (レス) id: 7f46cc82f6 (このIDを非表示/違反報告)
櫻子 - 足掻けば足掻くほどにドキドキさせられる作品！結末は既に決まっている中で、ドキドキしながら読みました！ (2016年2月20日 2時) (レス) id: 05f662a4f2 (このIDを非表示/違反報告)
櫻子 - 結末は既に決まっている中で、ドキドキしながら読みました！ (2016年2月20日 2時) (レス) id: 05f662a4f2 (このIDを非表示/違反報告)
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