終幕の前の第八節 ページ24
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その後の俺は、相も変わらず取り立てに追われ、身を隠し、見つかっては暴力を受け、また逃げて……。
そんな日を生きていると表現しても良いのであれば、確かに生きていた。返せど返せど、なくなることのない借金。
利子が高すぎる。もしかしたら違法だったのかも。だけどそれが違法なのかそうじゃないのか判別がつくような学は俺にはなかったし
弁護士に相談？……考えもしなかったな。結局、それも金がかかる。
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その日も金を返せと殴られて、なんとか逃げ出して。ぼろぼろになって、辿り着いたのは
同じようにぼろぼろに荒らされていたどこかの店先だった。
行き倒れ。な状態の俺が、雨に濡れていると
「使いなさい」と。しわくちゃの手が、白いタオルを差し出してくれた。
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店の奥に青いリボンが落ちていた。店のロゴが入ってる、それには見覚えがあった。
翔さんが持ってきてくれてた花にはいつも、このリボンが飾られていた。
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『明日には
潤『行く当てはあるの？』
『近くにね、アパートを一室借りたんだよ。そこに引っ越すの』
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どうせもうすぐお迎えが来るんだよと、ばあちゃんは呟いた。
花が好きだった。小さい頃から、花だけはいつでも無言で私をなぐさめてくれた。
大きなお店じゃなかったけど、ここは天国だったの。大好きな花に囲まれて死ねるなら
こんな幸せはないと思っていたのにね。
―――死ぬって、とても。寂しいことなんだねえお兄さん。
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ばあちゃんは、ぼろぼろ泣いていた。
俺も、ぼろぼろ泣いていた。
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『お兄さん、行く当てはあるのかい？』
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さっき俺が尋ねたのと同じ質問を、ばあちゃんは泣いてる俺に投げかけた。
俺は、ぶんぶんと。首を横に振っていた。
どうして俺は、翔さんに臓器を譲ったんだろうか。たいした金も入らないのに。
死んでもいいと思ったから？翔さんが生きたいと願っていたから？
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違うんだ。俺は、生まれ変わりたかった。
翔さんみたいに、生き甲斐を感じて、生きてみたかった。
翔さんのような輝いてる人の中で生きられるのなら、と思ってたんだ。
俺の一部が、翔さんのパーツとして機能する。翔さんと一緒に、幸せな人生を生きていける。
そのことにどうしようもなく憧れたんだ。
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なるちゃん(プロフ) - 読了後、すばらしい！と叫びました！三人三様の愛が苦しく切ない。とてもよかった。ありがとうございました！ (2018年9月4日 12時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
咲．(プロフ) - 覚えました。自分の語彙力の乏しさを悔しく思いますが…全てが不幸だ、と言い切れないこのお話がとても素敵だな、と思ったし素敵なお話に出会えて私は幸せだな、と思いました。本当にありがとうございました。 (2016年2月23日 0時) (レス) id: 7f46cc82f6 (このIDを非表示/違反報告)
咲．(プロフ) - コメント失礼します。"温かく苦しい"まさにその通りだと、最後まで読み思いました。彼が病気でなければ。臓器提供をしたのが彼でなければ。おばあさんとの出会いがなければ。ほんの僅かな点と点の違いで、人生がこうも動くのか、と目の当たりにしたような錯覚を (2016年2月23日 0時) (レス) id: 7f46cc82f6 (このIDを非表示/違反報告)
櫻子 - 足掻けば足掻くほどにドキドキさせられる作品！結末は既に決まっている中で、ドキドキしながら読みました！ (2016年2月20日 2時) (レス) id: 05f662a4f2 (このIDを非表示/違反報告)
櫻子 - 結末は既に決まっている中で、ドキドキしながら読みました！ (2016年2月20日 2時) (レス) id: 05f662a4f2 (このIDを非表示/違反報告)
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