終幕の前の第三節 ページ19
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潤の身体から、俺の身体へと移された内臓は上手く機能してくれている。
ただ病魔の手は、それ以外の場所にも広がりつつあった。それだけのこと。
こんな死にぞこないみたいな身体で、結婚だとか。
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翔「笑うなら笑えよ」
潤「………笑わないよ」
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手術の後、潤より先に退院が叶った俺は。彼の病室に何度か見舞いに行った。
花を持って、見舞いに―――そうだ。Aが働いてた花屋で、花を買ったんだ。
専務の娘だなんて知らなかった。
俺にとって彼女は、一生懸命に花の世話して。明るく挨拶してくれて。夢中になってこの花は、だとか。あの花は、だとか。
紺色のエプロンが似合ってた。可愛くて、魅力的に映って仕方がなかった。
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潤が退院してからは、花を買う理由が特になくなってしまって
たまに店の前を通り過ぎては、元気にしてるかな？って
遠くからでも一目、姿が見れればその日はやってやるぞ！って力が沸いてきて
それだけでいいと思っていた。あの頃は。
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専務が娘の見合い相手を探してるという噂と。その娘というのがあの花屋の女の子だということ
それを耳にしたとき、ちょうど俺の身体には異変が起きていて
再び受けた診察で「長くない」。事実を突きつけられたあの日も
帰り道、花屋の前を通りかかった。
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翔『辞めた？』
『父親だって名乗る男の人がね、部下を連れて強引にだよ』
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疲れ切った顔をして、店主のおばあさんは教えてくれた。
この店もね、立ち退かなきゃいけないんだ。すぐに退去するのであればお金をくれるっていうんだけどね？
もし従わない場合は、どんな怖い目に遭うか知りませんよって言われちゃってね……。
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翔『………これから、どうなさるんですか』
『お金なんて貰ってもね……老い先短い人生で使い切ることもできないだろうし、身寄りもないし……どうしようかねえ…。
Aちゃんみたいな子がいてくれて、まるで孫ができたみたいで……ずっとこんな暮らしが続けばいいと思ってたんだけど…』
翔『………』
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店先の、花が入っていたバケツは蹴飛ばされたままで、水が散っていて
靴底に踏みにじられたのであろう花々が、俺たちの
辿り着く末路。結末のように思えた。
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なるちゃん(プロフ) - 読了後、すばらしい！と叫びました！三人三様の愛が苦しく切ない。とてもよかった。ありがとうございました！ (2018年9月4日 12時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
咲．(プロフ) - 覚えました。自分の語彙力の乏しさを悔しく思いますが…全てが不幸だ、と言い切れないこのお話がとても素敵だな、と思ったし素敵なお話に出会えて私は幸せだな、と思いました。本当にありがとうございました。 (2016年2月23日 0時) (レス) id: 7f46cc82f6 (このIDを非表示/違反報告)
咲．(プロフ) - コメント失礼します。"温かく苦しい"まさにその通りだと、最後まで読み思いました。彼が病気でなければ。臓器提供をしたのが彼でなければ。おばあさんとの出会いがなければ。ほんの僅かな点と点の違いで、人生がこうも動くのか、と目の当たりにしたような錯覚を (2016年2月23日 0時) (レス) id: 7f46cc82f6 (このIDを非表示/違反報告)
櫻子 - 足掻けば足掻くほどにドキドキさせられる作品！結末は既に決まっている中で、ドキドキしながら読みました！ (2016年2月20日 2時) (レス) id: 05f662a4f2 (このIDを非表示/違反報告)
櫻子 - 結末は既に決まっている中で、ドキドキしながら読みました！ (2016年2月20日 2時) (レス) id: 05f662a4f2 (このIDを非表示/違反報告)
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