【skt】フィアンセ (ページ4)

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STORY.４彼女の名前は(skt) ページ4

「あ、メイド長！…ごめん、今ちょっとええ？」

「殿下？どうされました？」

ちょうど近くにいたメイド長を捕まえる。
少し躊躇いながらも、口を開いた。

「えっと、さ、探してる子おんねん。こう…髪が茶色でふわふわしてて、こんくらいの長さの……」

ジェスチャー混じりにそう説明すると、彼女は少し思案した後頷く。

「はい、直近に入ってきた娘に確かそのような外見の者がおりました。……しかし、なぜ殿下ともあろうお方がメイドなぞ探しているのです？」

メイド長の瞳からは、明らかに非難の色が感じ取れた。
彼女は、きっと正しいのだろうとわかっている。わかっているけれど＿＿

＿自分にも譲れない者があるんだ。

自分を鼓舞してメイド長を真正面から見据える。

「それが何か悪いことなん？……俺にも、譲れない者があんねん」

「……………」

＿＿しばらく無言の時間が続いたとき、メイド長が降参とでも言うようにため息をついた。

「名はAと言います。彼女は新人なので、広間などにはおりませんよ。いつも洗濯や厨房を任せております。そちらに行ったら良いのではありませんか？」

「あ、ありがとっ！」

「……ふふ、殿下には敵いませんね。わたくしは幼い頃から殿下を見ているのです。本気かどうかなんて一瞬でわかってしまいますわ」

今すぐにも厨房に向かおうとうずうずしているのが伝わったのか、メイド長はまたもや「ふふ」と笑う。

「Aなら、もう仕事を終えて就寝の準備をしているところでしょう。今宵はパーティーなのでお気づきでないかも知れませんが、もう夜も更けておりましてよ。訪れるならまた今度にして下さいませ」

「…あ、それもそうやな」

＿＿次時間があいたら、絶対に会いに行こう。

そっと微笑んだ。