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STORY.2 心が晴れない理由 ページ2

「ふぅー、洗濯物おわりっ。次はそろそろ厨房に行って片付けをしないと……」


ふんふふーん♪


お気に入りの曲を口ずさみながら、扉へと一歩踏み出す。


___床に落ちていたタオルに気付かずに。



ツルっ


「…へ?わわっ、」


体が強張り、瞳を固く閉じた。


ドタッ


「い、いって……」


誰かの声にこわごわ目を開くと、そこには痛そうに顔を歪めている殿下の姿があった。


「……!でっ、殿下にご迷惑をおかけして、誠に申し訳ありませんでした…」


これから受けるかもしれない仕打ちに怯えながら、必死で頭を下げる。
しかし、聞こえてきたのは、仕打ちの内容を告げるものでも、怒りの言葉でもなく、不器用な慰めの言葉だった。


「いや、そんな気にすることじゃないで?怪我したって言えばパーティー休めるし、むしろラッキーなくらいやわ」


「え、でもこのパーティーは、殿下の婚約者様を決めるためのものですよね…?」


不思議に思い、そう尋ねると、殿下は不貞腐れたように横を向く。


「…俺は別に望んでないし。結婚とか、一人の相手にこだわる理由がわからへん」


…ありゃ。
どうやらこの王子様は、まだ初恋すら未経験で、いろいろと拗れてしまっているらしい。


メイドにも優しくしてくれるような素敵な方なのに、勿体無いなぁ……


この心優しい王子様に、早く運命の人が現れることを願って、口を開いた。


「…わたくしは、殿下も、いつか心の底から愛しいと思える女性に巡り会える気がいたします。色恋とは、理屈ではなく心で感じるものですから。助けて下さり、ありがとうございました」


そう言って去ろうとすると、一瞬彼と目が合う。

殿下を見るのは初めてだったが、髪は燃えるような赤色で、瞳は少し甘みを含んだ朱色だった。
見すぎると、自分の体に毒として埋め込まれてしまいそうなほどの美しい顔立ち。
正直な体から体温の上昇を感じて、慌てて踵を返した。


********

「ねぇねぇ知ってる?昨日、殿下見つけたらしいわよ」

朝、洗濯をしていると、同僚にすっと耳打ちされる。

「ん?何を?」

「もう、“何”って殿下のフィアンセに決まっているじゃない!」

「え……」

「なんでも、まだご婚約はされていないとか」



……そっか、あの後見つかったんだ、フィアンセ。良かったじゃない。あんなに素敵な人がやっと報われて。




でも、どうしてだろう。





____心がちっとも晴れないのは。

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作者名:ねこワンだふる! | 作成日時:2023年2月22日 20時

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