STORY.１ 彼女に出逢った日(skt) ページ1
「殿下ぁ、是非わたくしをご贔屓に……」
「殿下、娘は領地でも話題の美人でして…」
「そうなんですねー、なるほどー、考えておきましょう。では、失礼しまーす」
「…あ、殿下ぁ！！」
知らんぷり知らんぷり。
カツカツカツカツ…
「……はぁ、めんどくせ」
歩きながら、ぽろっと本音が溢れでる。
「別に第一王子なわけでもないんやからさ、ほっといてや……」
そう、少し自嘲気味に笑ったとき、前の扉から床が軋む音がした。
ガバッ
「わわっ、」
「？……え、」
咄嗟に手がでて、扉から転がり込んできたメイドを受け止める。
ドタッ
「い、いって……」
「……！でっ、殿下にご迷惑をおかけして、誠に申し訳ありませんでした…」
打ったところをさすりながらメイドを見上げると、顔面蒼白で少し肩が震えていた。
少し可哀想に思い、メイドに笑いかける。
「いや、そんな気にすることじゃないで？怪我したって言えばパーティー休めるし、むしろラッキーなくらいやわ」
そう言うと、メイドは不思議そうに首をかしげた。
「え、でもこのパーティーは、殿下の婚約者様を決めるためのものですよね…？」
「…俺は別に望んでないし。結婚とか、一人の相手にこだわる理由がわからへん」
たった一人を愛するとか、そういう感覚がよくわからない。
恋をしたことないせいもあるだろうが、相手なんて誰でもいいと思っている自分がいた。
すると、メイドは白いエプロンをはらいながら立ち上がる。
「…わたくしは、殿下も、いつか心の底から愛しいと思える女性に巡り会える気がいたします。色恋とは、理屈ではなく心で感じるものですから」
ありがとうございました、と笑うメイドの顔が、太陽に照らされた。
…この子、髪は少し茶色がかってて、ふわふわしてるんやなぁ。それに、唇も桜みたいで………
そう考えているうちに、体温がどんどん上昇し、頬が赤く染まっていくのを感じる。今までロボットのようだった心臓が、自分の意思とは関係なしに大きく脈打った。
あれ、どうしたんやろ、俺…………
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作者名：ねこワンだふる！ | 作成日時：2023年2月22日 20時
