＃３４ テスト期間 ２日目＜シグレ＞ ４ ページ36
夕日が差し込み、柔らかなオレンジ色に染まった廊下を歩いていた。
ここは窓が大きくて、外の様子が自然と目に入ってくるようなつくりになっている。
３年の校舎に面した道にはポツリポツリと帰宅する生徒が歩いており、そこによく知る顔が含まれているのがわかった。
仲良さげに歩く美術部の九頭竜京摩と華道部の咲守A。
よく知る顔だが、こうして客観的に見ても本当に仲が良さそうだ。
微笑ましい光景を横目に見ながら進むと窓際に立つ女子生徒に気づく。
彼女はうつむき、窓の外を見つめていた。
淡い朱の光のなかに佇む、どこか哀愁を帯びた雰囲気の少女。
一枚の絵画のような風景に目を細め、それから彼女の名前を呼んだ。
「妙禅さん」
ハッとしてこちらを振り向くその人は、美術部部長、妙禅美朱亞。
戸惑いながらも笑顔をつくり、僕に返事を返した。
「どうも、二宮君」
困ったような笑みに罪悪感がわき出る。
確か彼女は九頭竜君の事を慕っていた。
そして、多分見ていたのは・・・・。
「・・・二宮君はきっともう知ってるんだよね、私が九頭竜のことが好きなの」
「まあ、ね」
「恥ずかしいなぁ。恨みがましく見てたとこなんて誰にも言わないでね？」
見ていてこっちが辛くなるような自嘲した笑み。
自分の想い人である従妹の笑顔を思い出し、その違いにはっきりと気づいた。
「諦めがついたと自分では思ってたんだ。でも、やっぱり実際に目の当たりにしちゃうとキツいね」
「・・・・九頭竜君には、告白しないの？」
言ってから後悔した。
なにしろ、僕は九頭竜君とAちゃんの恋が実るよう応援していたから。
でも、これだけは言っておきたいと思った。
「このままじゃ、君はずっと辛いままだよ」
妙禅さんはまたうつむき、しばらくしてから小さく呟いた。
「わかってるんだ・・・・でも、今の関係を壊したくないから」
彼女はきっと、気づいている。
もうもとの関係になんて戻れないことを。
すれ違ってしまった二人は、もう前のようにはいられないことを。
「・・・じゃあ、私はこれで」
「ああうん。またね」
笑顔を向けてから、妙善さんは僕が来た廊下を歩いていく。
いつもは部長として頼もしく見える背中が、やけに小さく、弱々しく見えた。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
妙禅さんの禅を善と書いていました！
ご指摘ありがとうございました！！
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恋歌@雲雀ファンクラブ会長(プロフ) - すごく面白いです!!九頭竜先輩かっこいい…。これからも頑張ってください!! (2015年8月15日 1時) (
レス) id: f6c9f1995a (このIDを非表示/違反報告)
あや⇔ラメント(プロフ) - 妙禅美朱亞??そんな子いましたっけ?? (2015年3月27日 8時) (レス) id: 09254cd312 (このIDを非表示/違反報告)
シザクラ - 僕は美術・文芸部なんですけど、うちの部はほとんど漫画研究部になってますよww歌うのも寝るのも話すのもokな部ってきっとうちだけですよねww (2015年1月2日 0時) (レス) id: e16fcff351 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑子@そろそろやばいぞ受験生(プロフ) - めっちゃかっこいいですやばいです!!!!更新まってますね！ (2014年9月27日 1時) (レス) id: 1e9cb63dbb (このIDを非表示/違反報告)
夕闇こやけ。 - 久しぶりのｺﾒです(笑)またです。更新頑張ってくださいね♪ (2014年8月4日 21時) (レス) id: 0435f93b9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：眞灯 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bbotann/
作成日時：2013年8月21日 20時
