庭の金魚の波紋のその先 (ページ9)

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-現在(高校2年生)-

　昼休み。友達と喋りながら渡り廊下を歩いていれば前方から「あーー！！！」と叫び声。
なんだなんだと前に視線を向ければ…、げっ！

「Aだ！今朝置いて行かれたから、顔見れてなかったんだよね～。うん、今日も可愛いね！」

　と、こちらに小走りで近づいてきて、上から下までじっとり、いや、ねっとりと見てくる樹に、今日は登校出来たんだと皮肉たっぷりに言った。すると、樹の後に続いてゆっくりと歩いて来た黒髪の青年が代わりに答えた。

「コイツ、さっき来たばっか。もう昼休み前に来るならいっそ休めばいいのに」
「いやいや！5限の化学、そろそろ単位ヤバいからさ。出席しないとなんだよね～」

　どうせ授業中寝てるから意味ねーだろ、なんて毒づく彼。やけに前髪が重ためで、でもそれが彼の色気を引き出しカッコ良さ増し増しで。ほら、周りの女の子たちがチラチラ見てはキャーキャー騒いでるの、北斗は気づかない訳？
　段々モヤモヤしてきて、知らず知らずの内にほっぺをプックリ膨らましてたようで、北斗の細長くて綺麗な人差し指にツンっと潰された。
　それと同時に腰を少し折って下からこちらを覗き見て来て

「なぁに？」

　なんて、それはもう甘く甘く聞いてくる。
あ、中庭の女子生徒何人か倒れた。少し遠くの方からは『あー！霞野さん限定で優しい黒王子！』なんて叫びも聞こえて、マウントを取るのも取られるのも好きじゃないけど、今は少しだけ優越感に浸りたい。ごめんなさい。

「んーん！何でもない」

　あー、ニヤニヤが抑えられずに変な顔してないかな、なんて考えていたら腰周りに違和感。
ふっと見てみれば北斗が何かしているようで…。

「ところで貴方、スカート短すぎ。もっと長くしなさい」

どうして折るかなーと、一生懸命スカートを戻してくる北斗。……は？
ポカンとしている内にスカートは完全に膝丈。いやいやいや。……は？なんで北斗はそんな『ひと仕事終えたぜ！』みたいな達成感に溢れてるの？誰のためにスカートを短くして、

「次、スカート短くしたらジャージ履いてもらうから」

　……はぁ？！？！
　樹は腹抱えて爆笑し、隣にいた友達も「出たよ、松村の過保護」とこれまた爆笑。さらには

「今日もお疲れ様、ほくとママ♪」

　なんて肩に手を置いてそのまま爆笑。
……あー！！！また保護者枠から出なかったよ！！！！！
一体、いつになったら女の子として見てくれるのか…。