庭の金魚の波紋のその先 (ページ8)

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「申し遅れた。ごめんね？俺は髙地優吾。中学2年で俺も、俺の両親も貴臣さんには世話になってる。俺は基本的にAの家庭教師って感じだな」

　そう言って笑った髙地先輩。あ、思い出した。

「どこかで見たことあると思ったら、田中の遺失物センター」

　ココ最近はそんなことは無いが、少し前までの樹はとにかく忘れ物癖が凄かった…。
樹が何かを忘れる度に髙地先輩が届けに来ていたため、クラスでそう呼ばれるようになったのだ。
　しかし、俺たちのクラス内での呼び方のため、他学年である他のメンツは知らなかったようで、

「AHAHAHAHA！！！！なにそれ～」
「樹…。それは髙地が可哀想だよ」
「髙地、間違えた。遺失物センター、今度は私のもお願いしようかな」

と、ジェシーは手を叩いて抱腹絶倒。
慎太郎は樹の肩に手を置き諭し、霞野さんは淡々と髙地をイジっている。

「樹！お前のせいで、変なあだ名ついてるんですけど？！」
「は？！しょうがないじゃん！ママに言っても『忘れたのが悪い』って言って持って来てくれないんだもん！！じゅり、悪くない！」
「あぁーそうですか！じゃあ、もう持って行ってやんねー」
「ごめんなさい、じゅりが悪いです」

　そんなドタバタ。きっとコイツらはコレが普通、当たり前なのだろう。そう思っていたら、隣にトンっと暖かさを感じそちらを見遣れば、霞野さんが寄りかかっていた。いつの間に…。

「ごめんね、うるさいよね」
「え…、あぁ、別に大丈夫。こんなに明るい家、物語の中だけだと思ってたから、ちょっと新鮮…」
「うん。うん、わかる。私も、拾われる前はそう思ってたから。特にさ、この家に住んでるのは今顔を合わせてるメンツしか居ないから、もう騒ぎ放題なんだよね。松村くん、『事実は小説よりも奇なり』だよ」

――事実は小説よりも奇なり

　さて、車を回してくるね。残りの荷物も持ってこよう！
そう言って、部屋を出ていく霞野さん。
　障子が閉まるのと同時に、みんなの方に視線を向ければニコニコとした顔でこちらを見ていた。

「北斗！よかったな」

　俺、実は少し心配してたのよ、って樹から。何だかその事実に照れて、短く「おぅ…」って返事して俯いた。