☆赤さんの証言 ページ35
「すばる、今日 ヒマ？飯 行かへんか？」
ヒナからの誘いなんて、いつぶりやろか？
でも、やっぱり…
「ええの？A先生…」
気に……なるよな？
「ええの。今日は夜勤やし、会われへんから」
A先生と付き合うようになってから、人当たりが優しくなったというか…
前以上に周りの変化に敏感になったというか…
今日も俺が ちょい しんどいなと思っとったところのお誘い
誰にもわからへんと思っとったけど、見事にバレてもぉとったとは
「「うぃ〜っ」」
カチンとジョッキを合わせてビールを一口
30過ぎのおっさんが集まれば、昔話にも花が咲いて
あん時は 若かったなぁ とか
調子 乗っとったなぁ とか
懐かしい話しとったら、俺ん中の重たいもんが少しずつ削ぎ落とされてって
「元気になって 良かったわぁ」
豪快にジョッキを空にするこの男は、やっぱり頼りになる
「すばるはなぁ、もうちょい食べ？ほらっ」
“これとこれ食うたら、エネルギーになりやすい ”だの
“これは喉に良くないからライブ前に飲むな”だの
「A先生の受け売りやろ？」
「せやで？あいつは俺ん事も、メンバーの事も心配してくれてんの」
「あぁ あぁ、そーですか。えぇ奥さんをお持ちですねぇ」
「なんやねん……それ…」
たぶん今、一番ヒナが悩んどる事
この仕事をしとる以上、先を考えるのは容易な事やない。
そん時の相手が大切であればある程、そのタイミングは重要で
でも、A先生は俺達よりも3つも年上。早く2人の関係を形あるものにしたいと こいつは思っとると思う
“はぁ”と短いため息をつくから
「ヒナ、タイミングや」
「ん〜？なにが？」
「何事も タイミングや。周りの事は考えるな。俺達の事も心配せんでもええ。
とにかく、お前の気持ちとタイミングが合うた時にA先生にビシッと言うたれ。
俺たちは、祝福したるさかいに」
「……すばる〜…」
なんや涙目になりながら、俺にガッシリ抱きついてきて
「くっ、苦しい…」
力の加減が出来てへんのは、酔うてる証拠やろうけど
「ありがとぉな」
そう言われると、素直に嬉しい
色々あったけど、やっと見つけた“運命の人”なんやろ？
ほしたら、一生かけて幸せにせな……な？
ヒナが幸せなら、俺も幸せなんやから
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作者名：ちか
| 作成日時：2015年12月12日 8時
