この恋、難攻不落につき。2 (ページ38)

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86話ページ38

…

愛美「大毅先輩……！」

2年の教室だというのに

躊躇いもなく入って来たのは、やっぱり彼女で。

その瞬間、彼が勢いよく手を引っ込めるから

また、現実に引き戻された気分になる。

愛美「あのっ、今日の放課後って…空いてたりしますか？」

可愛らしく頬を染めて俯く。

だけど大毅の表情は硬かった。

大毅「ごめんやけど…部活やから。」

彼女はあからさまに肩を落とし、涙目で大毅を見上げる。

愛美「じ、じゃあ…お昼は、一緒におってもいいですか？」

大毅の、こんなに困った表情見たことがない。

どうにか彼女を傷つけないよう、言葉を探しているみたいだ。

愛美「私…どうしても大毅先輩と一緒にいたくて、」

一歩大毅に近づいて、彼の腕に縋りつく。

その距離の近さに大毅が狼狽えたのがわかった。

くいっ。

大毅「っ、………」

反射的に掴んだ彼の制服のシャツ。

行かないで、

そんな意味を込めたのかもしれない。

私の行動に気づいた大毅が、唇をきゅっと結んだのがわかった。

次の瞬間、自分の腕に巻きつく彼女の手を振り払う。

大毅「……愛美ちゃん、こういうのもうやめてくれへんかな。俺ちゃんと断ったやろ？…正直、迷惑やから。」

これまでとは違う、大毅の冷たい言葉に

今にも涙が溢れそうな表情をする彼女。

大毅「もう教室にも……来んといて。」

急な彼の冷めた態度に

とうとう彼女の目から涙が零れ落ちた。

それでも態度を変えない大毅に

彼女の表情が歪む。

あー、今までもこうやって

男を落としてきたんだろうな。

だけど初めてそれが通用しなくて

苛立ってる、って感じ？

無意識のうちに、口角が上がってしまった。

それを見逃さなかった彼女が

大毅の肩越しに私を睨みつける。

だけどそんな彼女の視線に気づいた大毅が

私をそっと隠してくれた。

ああ、胸が苦しい。

いきなりこんな風に優しくするなんて

反則だよ、大毅………。

愛美「…私、諦めませんから。」

彼の行動に、さらに苛立った様子の彼女は

最後に私を鋭く睨みつけると去って行った。

大毅「…なんか巻き込んでもうて、ごめん。」

「ううん。…大丈夫。」

私の言葉に、俯きながらちょっとだけ微笑んだ彼に

また、心を奪われる。

…