7話 ページ8
…
流星「やっぱ、おった。」
体育はもうとっくに終わったというのに
私はまだ、ギャラリーで寝転がっていた。
しーんと静まり返った空間に
いるはずのない彼の声が聞こえて体を起こせば
彼が隣に腰を下ろした。
流星「体育の時にここでサボる癖、変わっとらんな。」
いつだったか私にこの場所を教えてくれたのは
流星だった。
流星「俺のシュート、見た？」
自慢気に片方の口角を上げて私を見る彼が憎たらしい。
「見たよ。」
一言そう返せば、満足そうに笑って。
流星「けど、望かわいそうやったな〜。せっかくシュート決めたのに見て欲しい人が隣のコートにおらんくて。めっちゃ落ち込んでたで？」
躊躇いもなく私の肩に腕を回し体を寄せる彼が…
私にはわからない。
一体何が言いたいわけ？
流星「大毅は、ずーっと由紀の方ばっか見てたけどな。」
トドメを刺すようなその言葉に
全身がカッと熱くなるのがわかる。
「…触らんといて。」
低く呟き、彼から距離を取ろうとする…
が、そう簡単にはいかなかった。
彼は私を離してくれない。
それどころかもっと彼の方へ引き寄せられていく。
やめてよ、私は他の女子とは違う。
あんたの周りをうろうろしてる馬鹿な子たちとは違うんだから。
幼馴染みなのに…
今まで私をそんな風に見たことないくせに
他の子と同じように私を自分のものにしようとする彼に苛ついた。
私が唯一わからない人。
好きな人が誰なのか当てられない人。
いや、好きな人なんていないのかもしれない。
最初は、知宙のことが好きなのかと思ってた。
だけど違って。むしろ逆だった。
知宙の方が、流星を好きだった。
彼の周りにはたくさんの女の子がいるけど
それの誰とも、彼の好きな人とは思えなかった。
だけど時折見せる切なげな表情が…
悩ましげに遠くを見つめるその瞳が
彼に、好きな人がいることを証明していた。
私は彼を見ているとイライラする。
それは彼の気持ちが読めないから。
他の人ならすぐにわかるのに
私は彼のことがわからない。
だから、苛つくんだ。
流星「もうすぐ体育祭やなぁ。」
…一体何が言いたいの？
流星「それが終わったら夏休みやろ？」
彼を見つめるけど
その意図は読めない。
流星「夏休み、2人でどっか出かけん？」
やっぱり、彼は……
「気が早いよ。」
何を考えているのかわからない。
…
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作者名：ホワイトモカ x他1人 | 作成日時：2019年2月21日 20時
