2話 ページ3
…
望はわかりやすい、と言ったけど
最近ではその人を見ていれば大体好きな人が誰なのかなんてすぐに予想できた。
例えば、席替えをして離れてしまったばかりにも関わらず
休み時間になるたび私の前の席へやって来る望を
遠くの方から見つめて、私への羨望の眼差しと隠しきれない嫉妬心を露わにするあの子とか。
きっとあの子は望が好きで
いつからか、なんてそんなのは知らないけど
仲が良いと思っていた私のことを今ではすごく憎んでいるはず。
普段はにこにことその柔らかな表情を崩さないけど
きっと心の中は私への憎悪でいっぱいだろう。
…だって、私も同じだから。
偶然、席替えをしても彼と隣同士になったあの子が
その無邪気な笑顔を、毎日のように向けられているあの子が
みんなの人気者で、サッカー部のエース、それにチャームポイントの笑窪を覗かせてはにかむ笑顔の彼に…
一途に想われているあの子が
私は世界で一番憎い。
授業中だって、前の方の席の彼らが嫌でも視界に入って
日々嫉妬と憎悪の気持ちが増していく。
いっそ、彼がわかりにくい人なら良かったと思う。
隣同士の席、いつも少し照れ臭そうにしているその横顔を
何かと彼女にちょっかいを出し、その度に彼女に触れようとする彼を
見ていればすぐにわかった。
彼はあの子が好きなんだと。
彼は小学生みたいに
好きな子はいじめたくなるタイプなんだと思う。
そんな彼の意図を知らないあの子は
彼にからかわれる度、ちょっかいをかけられる度
抵抗して、嫌がって
その言い合いはもうみんなの中ではただの痴話喧嘩程度で
またやってるよ、あの2人 なんて
まるで彼らが付き合っているかのように微笑ましく見守る。
だから、私は
見せつけるかのように 仕返しのように
いつも目の前の望に思ってもいない甘く、優しい言葉をかけて
その瞳が期待に満ちていくのを見て満足する。
こうして望はもう私から離れられない
あの子のところへなんて…行かせない。
由紀のところへなんて。
…
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作者名：ホワイトモカ x他1人 | 作成日時：2019年2月21日 20時
