渉の家3 ページ9
「今日泊まってく?」
「いや、帰るよ。近いし」
話しているうちにいつの間にか23時を過ぎていた。
俺はいつからか何となく、必要以上の泊まりは避けていた。
「洗い物しちゃうね」
「ありがと」
渉が料理を作ってくれた日は俺が洗い物をする。
キッチンに人を入れることに抵抗があるらしく前はさせてくれなかったけど、最近やっと任せてもらえるようになった。
「太輔ってたまに女の子っぽいよね」
渉はワイングラスを流しに置きながら、腕まくりをする俺を見てそう言った。
「何それ、悪口?」
違うとわかっていながらそう言うと、渉もわかってるでしょという顔で否定した。
「話してると普通に男っぽいけど、フトした瞬間に綺麗だなって」
「ちょっとちょっと、いきなり口説かないでよ。お酒入ると口説いちゃうの?」
「俺雑誌で『太輔が可愛い』って言うけど、あれ本当に思ってるからね」
渉は仕事とはいえ思ってないことは言わない。
「わたご機嫌だなぁ」
何だか目線を洗い物以外に向けられない。
隣にいないでソファにでも座っていればいいのに。
そんなことを考えてると渉が俺の頭を撫でた。
何だよもう、と笑いながらも渉の方は向けない。
「太輔は可愛いなぁ」
これ完全に「わんちゃん可愛いなぁ」と一緒でしょ。
まあ嬉しいけど。
気分がいいから俺も少し乗っかってみようか。
「俺もわたが現場で『俺の太輔』とか言うの嬉しいんだよね」
はははと笑って隣を見ると、機嫌が最高潮の渉がキス顔で迫ってきた。
ふざけているのはわかったが、俺もふざけて自分から顔を近づけてキスしてみた。
ちゅっ
ギャハハと2人で大笑いして、もう邪魔だからあっち行ってと渉を追い払う。
この柔らかい幸せは渉だけが持っている。
きっと何年先も一緒にいて、この幸せを感じられるだろう。
この温さをなるべく長く味わいたいと思ったが、帰りのエレベーターの明るさであっさりと消えてしまった。
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kikiKIKI(プロフ) - 長くお休みしていてすみませんでした。また少しずつ更新していきます。よろしくお願いいたします。 (2018年12月21日 19時) (レス) id: 3ff6683652 (このIDを非表示/違反報告)
kikiKIKI(プロフ) - オセロさん» ありがとうございます。長く更新が止まっていてすみません。何度か続きを書いてはいるのですが挫折を繰り返しています。けれど必ず書きますので、どうかお待ちください。 (2017年11月18日 21時) (レス) id: 3ff6683652 (このIDを非表示/違反報告)
オセロ(プロフ) - 始めてコメントします。このお話のリアルさにビックリしました。文脈に横藤のリアルを感じます。長い眼で待たせてもらおうと思ってます。期が熟したら続きをよろしくお願い致します。 (2017年11月11日 20時) (レス) id: 57b12fa68e (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - kikiKIKIさん» 横藤だと思いながら読ませていただいてたので安心しました!更新楽しみにしてます。お返事ありがとうございました<(_ _)> (2017年1月28日 23時) (レス) id: 8ebc8c7a9b (このIDを非表示/違反報告)
kikiKIKI(プロフ) - mさん» 間違えました!ご指摘ありがとうございます。横藤が正しいです。重要な所を間違えて冷や汗が出てしまいました>_< (2017年1月28日 16時) (レス) id: 3ff6683652 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kikiKIKI | 作成日時:2016年11月25日 17時