陽だまり

マネージャーの車 ページ16

渉への気持ちを自覚してから、間違いだと願っても逆にどんどん増していく気がした。
寝ても覚めても渉のことを考えているんじゃないか。


唯一、仕事中は考えないでいられる。
自分の役割だったり全体の流れに集中していると、余計な事を考える隙はない。


誰かに相談することなんてもちろんできない。
気持ちが育つ一方なのはそのせいなのかな。
誰かに「恋じゃないよ」と冷静に言ってもらえば、この勝手な盛り上がりが一気に冷める気もする。


でも、相談するなんてあまりに現実的じゃない。
声に出してしまったら無かったことにはできない。
出したら最後、しまうことはできない。


やっぱりひっそりと自分の中にしまい続けて、自然に無くなるのを待つしかないのか。




いっそ彼女ができたら渉のこと忘れられるかな。


いつかは忘れなきゃいけないんだ。
付き合ってるならともかく、望みのない片思いの終わりを先延ばしにする理由はない。
それなら忘れる努力をすることは間違っていないはずだ。


職業柄出会いもなく、あっても今までは積極的になれなかった。
相手を選ばないと事務所やメンバーに迷惑をかけるというリスクを伴う。
とするともう面倒臭い。


でもこのまま渉への想いをズルズルと携えて一緒に仕事をするのも、精神衛生上よくない。




どっちにしてもみっともないなぁ。
恋を忘れるために他の人と付き合うのも、叶わないと唱えながら好きでいるのも。


自分で自分が嫌になるって、こんな時に使う言葉だな。
ただジタバタともがいて、何の成果も得ない。






「太輔、着いたよ」


帰りの車で寝たふりをして目をつぶる俺に、渉が声をかけた。
渉とは家が近いから、同じ車で送られることがよくある。


渉の声の優しい響きと、そっと肩に触れる指に本当に眠くなりながら目を開けた。

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