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野球ばっかりしてきた龍馬の、輝かしい姿をたくさん見てきた。ただ、しんどそうにしている姿を、一度も見たことがない。怪我をしても、調子が悪くても、悔しい思いをしても、家には何も持ち込まずに帰ってきてくれる。
これはきっと、龍馬なりの気遣いであって、優しさであって、愛情なのだと思う。ただ、それ以外のイライラはすぐ態度に出すから、分かりやすいのだけれど。
支えることは、頼られることだ。頼られなければ、支えているとはいえない。そんな考えのときもあったけど、
「変な気遣うなアホ。葵は口煩くしながら、笑ってればええねん」
そう言われたことがあった。ありのままでいればいいのか、そう肩の荷が降りて、私は龍馬との同棲を決意した。思いの外大変なことが多いけど、彼の隣を誰かに譲る気なんて毛頭ないから、サポートすることは私の使命になっていた。
「唐揚げうっま!」
「…スリーアウトチェンジです」
「もうええやんそれ」
「唐揚げの隣にあるのは緑の山は何かな?見えないのかな?」
「はいはい、食う食う」
「私は龍馬の3倍サラダ食べてるのに!ちょっとはサラダで乾杯しようとかない訳?」
「サラダで乾杯?頭おかしいんとちゃう」
「やめて、スベった自覚あるからやめて」
なんやねんそれ、と笑いながら、唐揚げを食べる箸が止まらない彼に、私もくすりと小さく笑ってしまう。美味しそうに、豪快に食べてくれて嬉しい。結局、唐揚げに満足してから、サラダや副食に手をつけ始めて、完食してくれた。
「はー、ごちそうさま」
「お粗末さまでした」
満足そうな彼を横目に、食器を片付ける。一度座るとやりたくなくなってしまうから、そのまま洗い物に取り掛かっていると、ふらっとキッチンに現れた龍馬。
え。なに。手伝うの?いや、まさかまさか。
そんなことを思って龍馬を見ていると、表情に出ていたらしく、そのジト目ブスやでと言われた。優しい私は、かわいく蹴りを入れておいた。
大袈裟に痛がる龍馬を無視して、食器洗いを続けていると、鼻歌を歌いながら横で眺めてる。(だけ)
「なに?珍しい」
「たまにはええやん」
「ええけど、じゃあ食器拭いてくれる?」
「えー」
「……」
「うわ顔こわ。眉間に皺寄ってんで」
「ごめんごめん、横の人に呆れすぎて寄っちゃったみたい」
「……」
「……なに、急に黙って。怒ったの?」
「……今日、」
「え?」
「今日…ええ?」
「…っ」
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aoi(プロフ) - Ey3467さん» はじめまして*こちらこそありがとうございます!とても励みになります^^ (2021年6月1日 12時) (レス) id: 4b9a3afcbe (このIDを非表示/違反報告)
Ey3467(プロフ) - はじめまして!aoiさんのお話ほんとに大好きなので更新していただけてほんとに嬉しいです! (2021年5月31日 12時) (レス) id: 8bada13383 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - よせさん» コメントありがたいです、うれしいです! (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - り子さん» うれしいお言葉ありがとうございます*(頂いたコメントですみません、り子さまのおはなし、私もだいすきです…!) (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みやさん» ありがとうございます、嬉しいです* (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoi | 作成日時:2019年4月2日 23時