支えるということ ページ2
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西川龍馬はスカしている、とか言われているが、私の前ではただの子どもである。靴下は脱ぎっぱなしだし、食べた食器は片付けないし、少し気を抜くと洋服や靴にお金を使いまくってしまう。まあ、彼が稼いだお金なのだから、とやかく言う権利もないが、私がわざとらしくため息を吐くせいか、最近は少し控えているらしい。
就職して早6年、一人暮らし歴も同様。家事は卒無く熟すし、それがひとり分だろうがふたり分だろうが、大して変わらないのだけど。それに甘えっぱなしの龍馬を、やれやれと許してしまうのは、やっぱり彼のことが好きだからだと思う。
一緒にいることが当たり前すぎて、恋なんて忘れると思っていた。だけど、無邪気な笑顔とか、たまに見せる男らしさとか、さり気ない優しさとか。ああ、そんなことされたら、ときめいてしまうよ、ってことをさらっとやってのけるのが、西川龍馬という男なのだ。こういうのを、スカしてる、っていうのかな。
ほら、今も。高い棚にしまってしまったものを、背伸びをして取ろうとしたら、さり気なく取ってくれた。ベタだけど、嬉しい。
「今日、飯なに?」
「唐揚げー」
「え、まじ?やった」
「その前にサラダね、サラダ」
「えー、はよ肉食いたい」
「それはルール違反です。アウトです」
「即スリーアウト?」
「秒で」
「きついわ。ええやん別に」
「…葵さんはダイエット中なんですー。そんな頑張ってるひとの前で、真っ先に唐揚げ食べるんですか?彼女はサラダメインで食べてるのに?せめてサラダくらい付き合ってくださーい」
「…そりゃ、この腹はどうにかした方がええな」
「あ?」
ぷに、と脇腹を掴む憎たらしい手。その手をぱしっと叩くと、商売道具だと怒り始めた。そんな強く叩いてないのに、折れたわーあかんわー、なんて言いながら、そそくさと大皿に盛られた唐揚げをテーブルに運んでくれた。
いいよな、細身で。体を大きくするから体重増やしたいなんて、言ってみたい人生だったわ。
そう彼の背中を見つめながら思う。ただ、体を鍛えることやケアすることは、龍馬にとってとてつもなく大切なことだと、そして大変なことだというのは、私も重々理解している。
だから食事はバランスよく。彼の状況に合わせて、必要な食物を取り入れている。おかげで栄養について、やたら詳しくなった。
でもそれは、彼を支えるということであって、愛しさの一部なのだと思う。
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aoi(プロフ) - Ey3467さん» はじめまして*こちらこそありがとうございます!とても励みになります^^ (2021年6月1日 12時) (レス) id: 4b9a3afcbe (このIDを非表示/違反報告)
Ey3467(プロフ) - はじめまして!aoiさんのお話ほんとに大好きなので更新していただけてほんとに嬉しいです! (2021年5月31日 12時) (レス) id: 8bada13383 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - よせさん» コメントありがたいです、うれしいです! (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - り子さん» うれしいお言葉ありがとうございます*(頂いたコメントですみません、り子さまのおはなし、私もだいすきです…!) (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みやさん» ありがとうございます、嬉しいです* (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoi | 作成日時:2019年4月2日 23時