期間限定の恋人ごっこ【桃】三

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「佐久間、最近元気ないね？」




デビューが決まって数日、Aちゃんと別れたことになっても数日が経った頃、番組収録の合間の休憩室で阿部ちゃんが心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。




「そ？」

「うん、最近仕事も増えたし。夏バテ？て感じでもないしなー。となると、彼女の事くらいか？」

「ふふ」



相変わらず鋭いよねえ。

確か以前もそんなことがあったよねって思い出して俺が笑うと、「話聞こうか？」て優しさ全開で阿部ちゃんは新品のスポーツドリンクを差し出した。









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あれは滝沢歌舞伎ZEROの東京公演真っ只中で、ほんと怒涛の忙しさに元気が取り柄の佐久間でさえも目が回りそうだった頃。


何度かAちゃんに連絡しようとしては忙しさに甘えて止めた。


でもさすがにいつまでもこのままという訳にはいかないし、どうしようかと思っていた頃阿部ちゃんからの電話で阿部ちゃん行き付けの喫茶店へ呼び出された。






｢阿部ちゃんっ、急に来いってなに？ つうか雨すげぇよ……って、え？｣


｢よ！ ごめんごめん。これから朝方まで雨だよ。あ、さすが佐久間じゃん俺の分の傘持ってきてくれたんだ、ありがとう｣


｢あ、いやうん……はい｣


｢ああっ、忘れてた！ 俺、これからクイズの勉強しなきゃいけないんだった！｣


｢え、それって今じゃなくても、｣





呼び出された喫茶店へ行くと、直ぐに視界に飛び込んだのは阿部ちゃんと向かい合って座る驚いた顔のAちゃん。

ポカンとしてたら振り返って寄ってきた阿部ちゃんに傘を奪われて、まあ本人のために持ってきたんだけど。




そして嵐のようにびゅーんと去っていった。



やられた。





｢……久しぶり、｣

｢うん、元気？｣

｢……ぼちぼち｣

｢ずっと連絡しなくてごめん、ちょっといっぱいいっぱいになっててさ｣

｢忙しいんだろうなって思ってたから｣

｢……Aちゃんて、ほんと優しいよね｣





なんで数週間も連絡しない俺に怒るなり呆れるなりしないんだろうか。




｢大ちゃん、だからかな｣

｢え？｣

｢ずっと何年も会えてなかった時に比べたら、3週間会えないくらいどうってことない、かなって｣


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