期間限定の恋人ごっこ【桃】三

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どうして俺はAちゃんの事となると余裕がなくなるのか。

最近じゃあ頼ってくれる後輩も増えてきて、自分でも少しは大人になったと思ってたのに、あの男を見てたらイライラして顔に貼り付けた笑顔を保てなくなる。



そしてそのイライラは一番困らせたくないAちゃんを困らせてしまった。





｢ねえ、さっきの人だよね"高橋さん"て｣

｢そうだよ。そうだ大ちゃん、さっきの態度は大人としてどうかと思うよ！｣

｢だってあの人どう見てもAちゃん狙ってんじゃん｣

｢は？ なにそれ｣

｢なにそれって…。Aちゃんもさ、女２人だけだったじゃん、それでフラフラになるまで呑むってどうなの？｣

｢大ちゃん行って良いって言ったよね？｣




良いとは言ったけど、男4人に女2人だよ？


しかも一応俺っていう存在がいて、あんなに浮かれて羽目外す？


ほんと危機感ねぇなって苛立ちが積もる。





｢それにっ、ただの幼なじみって、なに？｣


｢ただの幼なじみなんだから、私が誰といようがお酒呑もうが、｣


｢誰を好きになろうが、大ちゃんに関係ないよね？｣





正直驚いた。

Aちゃんがこんなに感情をみせて怒ったことは、これまでに見たことがなかったから。

そして自分が言った『 幼なじみ』で、彼女を傷付けていたことに気付いて悔しくて堪らない。



からかいのネタにされたくなかったのに、それでも彼女を結局傷付けてんじゃん。



情けねぇな。





｢Aちゃん、ごめんね｣

｢うん、帰ろっか｣




その日、Aちゃんを家に送って俺は寄ることなく家路についた。






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