20話『ルーク』 ページ20
「ところで帆理くん。君は、これからどうすれば良いのか知っているかい?」
「ぁ、えっと…確か出口を探すらしい、です…」
帆理の言葉は尻すぼみにはなったものの、ルークの耳にはしっかりと聞こえていた。
「おお、そうなのか。君は、あの…何だったかなぁ、ええっと、ウサギと言ったか?あの変な生物の話を聞いていたのか」
偉いな、と頭に手を乗せて撫でると、
帆理は、くすぐったそうな、不服そうな、そのどちらとも取れない微妙な表情を浮かべた。
それにしても、出口を探すとは、
一体何なのだろう?
疑問符で頭が埋め尽くされそうな気がする。
抑もだ、此処に出入り口なんて存在するのだろうか?
見た所、扉の前に、人の影も形もないのだ。
右も左も、前も後ろも砂漠が広がっているだけ。
情報は疎か、帆理以外の話し相手がいない。
出される意見は、二人分しかないのだ。
「さて、まあどうしたものかな。出来ればもう少し涼しい場所に移動したいのだが…」
「涼しい場所…」
その部分だけ復唱した帆理も、ルークと同じく暑いのはもう嫌なのだろう。
薄っすらと首筋に汗を垂らす彼を、ルークはじっと見つめていると、感じてはいけない事を考えてしまう。
___その白い首筋に、歯を立ててみたい_
抑えがたい、吸血鬼としての本能を感じてルークは必死に目を逸らす。
まさか、暑さのお陰で頭までやられるとは、思いもしなかった。
普段のルークは、必要最低限の他での吸血行為を嫌っていた。
同じような姿をした人間に、自分の欲をぶつけるのは違う気がしていたからだ。
それに加えて、気が引けた。
ルークは、人間は自分と同じ生き物だと思っているのだ。
それが、彼の正義であり、唯一彼が心に持っている一種の自己暗示であった。
けれども今は、腹が空いているわけでも、
渇いているわけでもない。
ただ、単純に帆理が、帆理の血が飲んでみたいという沸騰しそうなぐらい、熱く煮え滾る思いがルークを強く支配する。
ごくり、と生唾を飲み込む音がやけに生々しかった。
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泉罪(プロフ) - おわりましたー (2017年4月15日 15時) (レス) id: b8d70dc730 (このIDを非表示/違反報告)
泉罪(プロフ) - 更新しますー (2017年4月15日 14時) (レス) id: b8d70dc730 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - 終わりました (2017年4月4日 12時) (レス) id: fe844cdf7e (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - 更新します (2017年4月4日 12時) (レス) id: fe844cdf7e (このIDを非表示/違反報告)
怪盗エリン@ぷよテトガチ勢(プロフ) - 更新終わりました (2017年3月30日 14時) (レス) id: a32125eb65 (このIDを非表示/違反報告)
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