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「てかさ、付き合う人の条件でダイビング免許はどうなの?」
「理想の、だから!それくらいアクティブな人っていう意味で」
「みんな無茶言うな!って思ってる」
「いやいや、ね」
「どうする?そんなこと言われたら皆取得するよ?」
「え、やばいね、ダイビングイベできそう」
「前代未聞だよ声優のイベントとして」
「確かに。ほとんど声聞こえないだろうしね」
楽しそうに笑う山谷君。
イベントでも話題になったこの発言について聞いてみた。
ダイビング免許・・・いや無理でしょ。とそこまで考えて、いやいや、なに条件満たそうと考えちゃってんの自分、やめな!と思い直す。
「まあでもAくらいアクティブなら問題ないよ」
「え?」
その言葉に深い意味なんてないんだろうけど、思わず動揺してしまう。
いつもなら突っ込んだり、煽ったりするところなんだけど。
だめだ、酔ってるのかもしれない、頭が動かない。
「ちょっ、と、そういう反応されるとは思ってなかった」
山谷君をみると、少し耳を赤くして、口を手の甲で押さえながら目をそらされた。
「ご、ごめん、そういう意味じゃないのはわかってるよ」
ただちょっと酔っちゃったみたいで、と続けようと思った私の声を遮って山谷君が言った。
「いや、そういう意味、なんだけど」
予想外の返答にまた頭がショートする。
私は今なにを言われていて、どういう状況なのか。
「あの、山谷、君?」
「ごめん、俺、酔ってるのかもしれない」
「あ、うん、そうだね、そろそろお開きにしよっか」
やはり友人とはいえ男女が二人で飲んで、酔いが回るとこういう間違いが起こるものなのかもしれない。
今のやり取りだって、きっといつものノリと変わりがないんだろう。
このあと家で飲みなおして、いっそ忘れてしまおうかな。
「や、ほんと、ごめん、酔ってない、嘘ついた」
「え、なに、どうしたの?」
「酔ってるとかじゃ、なくて、俺、Aに気がある」
「それって」
「ちゃんと、ノリとか、勢いとかじゃなくて、本当にAのことが好きです」
見たことのない表情でまっすぐに見つめてくる山谷君。
すべてが予想外でまだ頭がついていかない。
でも、私も気づかないふりをしていたけど・・・。
「スキューバダイビングの免許ないよ?」
「うん、Aならいい」
「・・・お願いします」
「ん、よかった」
嬉しそうに微笑む彼と共に歩いて行ける幸せを、今はただ噛みしめた。
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作者名:おーかみお | 作成日時:2020年1月19日 18時