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その日の夜、宿の温泉に入り、休憩所で漫画でも読もうかなと足を進めると
先客がおった。
重岡「Aやん」
「あ、大毅。」
漫画に没頭していたらしいAが顔を上げた。
10畳くらいの休憩室に2人。
ちょっとドキドキする。
Aもお風呂から上がってきたばっかりか、
髪の毛から水がしたたり落ちていた。
浴衣濡れてるやん。
俺は、自分の肩に掛けていたバスタオルをAの頭に乗せた。
「…え？」
重岡「髪、拭いてやる。」
「自分でやるよ。」
重岡「黙って漫画でも読んどけ。」
俺は、Aの長くも短くもないセミロングくらいの髪の毛が好き。
Aは癖毛で、美容院でお願いしなくてもパーマがかかる。
女子からしたら羨ましいんやろうな。
お風呂上がりのAは水で濡れてるせいで直毛になるけど
俺はどっちのAも好き。
Aの髪の毛を拭いていると
「漫画読めへんよ、そんなに覆い被さられたら」
Aの顔は俺が掛けたバスタオルで見えへん。
ふふッと笑って
俺はAの髪の毛をわしゃわしゃーってした。
「あ、ちょ、強い強い」
重岡「注文が多いなぁ」
「あはは、ごめんなさい重岡さん。
とても気持ちがようございます」
重岡「それは何よりでございますぅ」
「ふふ」
ほら、やっぱりAはAやんか。
俺とAの関係はなんも変わってない。
２年あってなくても、昔に戻れるんや。
重岡「ほい、終了」
俺がバスタオルを自分の肩に戻すと
「そんな濡れてるの肩に掛けたら、今度は大毅の方が濡れんで？」
重岡「ありがとうは？」
「ありがとうございます」
重岡「よしよし」
俺はAの頭を撫でた。
まだ湿ってるけど、十分水気は切ったはず。
「大毅ってホンマに変わらんな。」
重岡「なんや突然」
笑ってたAが、うつむいた。
体育座りになるA。
Aの横におると、長い髪の毛で表情が見えない。
「大毅は大丈夫。
きっとうまくいく。
だから…」
いま、どんな顔してる？
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作者名：きい
| 作成日時：2021年1月8日 0時
