思い上がって ページ26
次の水曜日。
仕事が休みだったから、立川へAに会いに行った。
流星や小瀧に言われたことを思い出せば
イラっとするけど
それでも自分の気持ちを抑えることはできなくて
Aに会いにいってるだけやから。
メンバーのみんなには言えないこのなんとも言えない罪悪感。
Aの前だけが自分が自分で居られる唯一の場所やから
そう言い聞かせて、今日も喫茶Sakuranoのドアを開けた。
案の定Aはおって。
重岡「よっ」
いつもの慣れへん
ぎこちない笑顔でAに手を挙げると
「…もう来なくていいよ」
急にそう言われた。
いや、今日まだあったばっかやのに。
重岡「なんでそんなこと言うん。
コーヒーちょうだい」
Aはいつも通りコーヒーを俺に渡した。
「それ飲んだら、帰って」
…いつもと違う。その違和感がどうしても抜けない。
いつもやったら、Aと笑い合いながら関西時代を思い出して
こんなんやったなとか
中学のAはさぁ
ちょっとやめてよそんな昔の話
他愛のない話してた。
やのに。
今日はそんなこと一切せず
問答無用、帰れ。
そう言われているようで。
Aのそんな行動にちょっとイラっとした。
重岡「なんでやねん。
なんでそんなに言われなあかん」
「…別に私、定休日に大毅に来てって言うてないし」
…は。
重岡「なんやそれ。
一方的に俺が会いに行ってるみたいな言い方」
「あってるやん」
Aは、俺から目をそらした。
自分用にコーヒーを作り始めている。
豆の音がうるさい。
「前から言うてるやん。
私と大毅じゃ釣り合わんよ」
重岡「なんでやねん。
釣り合うとか釣り合わんとか、そのモノサシでしか俺のこと見れないんか。」
「当たり前やん。」
重岡「なあ、自分の感情は？
俺に対するAの気持ち聞かせてや。」
俺は、気持ちがどんよりしているAを明るくさせようと
笑顔でAを見た。
だって、８年ぶりに会ってから
Aの本当の笑顔を見て居ないから。
俺ばっかり愛を求めて
俺ばっかり好きで
Aは自分の気持ちを押し殺している。
俺は、昔みたいにAと笑い合いたい。
そう思ってるのに。
「その笑顔、もう私に向けんといてくれる？」
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作者名：きい
| 作成日時：2021年1月8日 0時
